自分が投じるその一票の重みを知ることになる:映画「新聞記者」 #新聞記者みた

大学時代の友人がお勧めしていたので観てみました。
どこにも忖度が感じられない映画「新聞記者」です。

この映画では

・なぜ、長期政権が維持可能なのか

・なぜ、獣医学部を持つ新しい学校の開設に、内閣府が関与していたのか

この2つについて、この映画なりの解釈が示されています…と書こうとしたら、どうも調べてみるとここで描かれているのは過去に小さな声で報道されていたことなんですね。自分は普段政治ニュースをそれほど深追いしていなかったので知らなかったのですが、こんなヤバい火種があったとは。

シム・ウンギョンというキャスティングや、本田翼の甘ったるさが当初気になりましたが、シム・ウンギョンの方はもう終盤はそういうのがどうでも良くなるくらい(失礼)涙腺緩みっぱなしでした。泣かせる映画では全然ないんですよ。泣かせる映画ではないはずなのに、なぜ泣けるのか。それはたぶん自分がサラリーマンとして忖度を繰り返してきた結果なんだと思います。まぁ本田翼は最後まで甘ったるかったですが…。

物語は、ここ数年で「そういえば聞いたことあるような」事実をモチーフにした題材を紡いでゆきます。それは衝撃の2段ロケット構成になっており、ロケット1段目は「なぜ長期政権が維持可能なのか」、そして2段目は「あの内閣府が関与していた獣医学部の真の目的(のポテンシャル)」です。

「なぜ長期政権が維持可能なのか」については、まぁそうなんだろうな、自国内のみならず他国のサイバーチームに対抗するにもこういう部隊は必要だよな、とは分かってはいましたが、いざビジュアル化されるとなかなかの衝撃です。内閣情報調査室にある、マスコミやSNSを裏から操る専門部隊。やたらと twitter に傾倒しているのは映画の尺から来る制約でしょう。ただ、セリフの「2ちゃんねる」は「5ちゃんねる」と言って欲しかったかな。あえて2ちゃんねるにしたのかな。現実世界では他にも著名広告代理店を使っているという話も聞いたことあります。

「あの内閣府が関与していた獣医学部の真の目的(のポテンシャル)」は本当に自分はその元ネタを知らなかったので衝撃がハンパなかったですが、ネットを検索するとどうもトンデモ理論ではなかったことが分かってさらに衝撃が増します。そのネタ単体と言うよりも、現政権が行っている行為の点と点を繋いでゆくと繋がってしまう…ということろがさらに怖い。

こんなにも優秀で、誠実な人がいる政界で、なぜ組織としてこんなことが行われてしまうのか…自殺者まで出して…。ダブル主人公の1人、杉原(松坂桃李)は主人公らしく正義感に苛まれ葛藤する役ですが、杉原の上司で内閣参事官の多田(田中哲司)は一見悪役に描かれています。しかし最初に杉原を恫喝するシーンの直前のため息を私は見逃しませんでした。多田も本当は分かっているのです。分かっていてやっているのです。彼も本当は誠実な人間のはずなんだと思わせる「ため息」。ああいうのを見てしまうと辛いですね。組織人として。

一方で、内閣情報調査室の怖さを描くはずの描写…たとえば「全員『一般人』ですよ!?」 「全員『犯罪者予備軍』だ」というやりとりや、筋書きを正当化するための「チャート」を(事実に反しない範囲で)作り上げろなどという指示にはあまり怖さを感じなかったのは、自分が巨大企業の組織人として毒されているからなんでしょうね。自分の汚れっぷりを少し自覚しました。だからこそ、そんな自分の人生に重なるところがあって、涙腺が緩むのかも知れません。

終盤、杉原が個人的な幸せを犠牲にする(することになると思います)渾身の選択をします。しかし、その結果、政界がどうなったかの結末は描かれません。それは現実の政権が長期維持されている以上、それを描いてしまうと一気に作り話っぽさが増してしまうからなのでしょう。結末を選択するのは我々国民なのだというメッセージと受け取りました。

この映画の中の世界は多くの国民にとっては虚像とも取れる世界かも知れません。自分とは縁がない世界の話だと。そういうことも手伝って、おそらくこの映画を観ても「所詮噂ベースでしょ」と冷静に考える方が多数でしょうし、7月21日の参議院選挙の投票先をこの映画を観て変えた、という人もそう多くはないのではないかと思います。

しかし、自分が7月21日に選択したその一票の、重みを感じることになると思います。

 

 

予告編も公開されていますが、すでに映画をご覧になった方は、この爽やかな予告編では本編の怖さを数分の一も表現できていないことに同意頂けるのではないでしょうか。こんな軽いものではないですよね…と感じるのは、本編の松坂桃李の魅せる力と、言葉を発しないときのシム・ウンギョンの表情での演技力でしょうか。

興味がある方は、7月21日が来るまでにご覧になることをお勧めします。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)