Sony Clip-On<クリップ・オン> SVR-715 レビュー・HDD換装




 
●旧型を入手

SVR-715、メーカー標準価格は198,000円だが、2001年6月にケーズデンキで実売103,000円。各社D-VHSと競合する価格だ。なお、録画時間が1.3倍の新型SVR-515は118,000〜128,000円、出たばかりのPanasonic「デジタンク」はディジタルハイビジョン録画ができて148,000円なり。ディジタルハイビジョンは時期尚早だと思っているし、HDDの大容量化は自分でやればいいと考え、SVR-715を選択。


●騒音はデスクトップPC並

AV機器の割には結構うるさい。一般的なデスクトップパソコンよりは静かだが、AV機器として期待される水準ではないようにと思う。騒音は「電源を切るとほっとする」くらいと言えば解ってもらえるだろうか? Clip-OnはHDDの他にファンを2機内蔵しているので、うるさいのはもっともではあるが、まだ静粛性までは詰められていないように感じた。


●MPEG臭の少ない絵

画質は3段階=HQ,SP,LPに調節できる。HQが最高画質で、SPが標準、LPが長時間モードだ。 手持ちの28インチワイドテレビにS端子で接続して見ているが、ディジタルビデオ製品らしいリッチな色の乗りが印象的だ。自然画の番組を見ている分にはSPモードで十分。ただし、アニメなどエッジくっきりな動画はSPモードですらMPEG特有のノイズが気になるので、HQモードで録りたいと思った。LPモードは素人にも区別の付く低画質で、ニュースなど内容が解ればよいコンテンツ向き、観賞用ではない。しかしソニー独自のMIP(MPEGイメージプロセッサ)のお陰で、どのモードもMPEG臭さを減らすことには成功している。圧縮前にはMPEGの圧縮に適したフィルタをかけ、伸張後にはMPEGによって乗ったノイズを低減するフィルタをかけているらしい。パソコン上の同等レートのMPEG画像と比べるとだいぶMPEG特有のノイズが低減されていると思う。その代わり現在のフレームに前のフレームの一部の絵が薄く重なっているなど、変な残像が見えたりする。

それとClip-OnにはCMスキップ機能がない。今どきのビデオデッキにしては珍しい。


●Gガイド・Gコードを搭載

番組表のデータ放送は1日2回で、定刻(11時25分頃と14時5分頃)らしい。何らかの理由で受信できないと、次のデータ送信時刻まで番組表が出ないらしいのだが、購入してからこのかた、その現象は確認できていない。ネット上で「Gガイドが受信できない」という人を見かけるが、サービスエリアに入っているか、番組表受信時刻の設定を自分で変更していないか確認た方がよい。番組表の放送時刻はある程度決まっているようで、ユーザの都合で操作してはいけないようだ。また、Gコード機能も付いているが、Gガイドが正常に受信できている間は、おそらく使わないと思われる。案の定、新型(SVR-515)では省略された。


●ワイドテレビではGUIは当然ゆがむ

Clip-OnのGUIのレスポンスは情報家電としては一般的な速度だが、パソコンのGUIと比べるとモッサリしている。凝ったGUIなのでいさしかたあるまい。逆に速すぎると混乱するお客さんもいるのだろう。また、残量表示の「丸い絵」は、画面左側に表示されるため、一般的なワイドテレビで伸張表示すると、卵形の少々不格好なグラフィックになる。Clip-Onのカタログで使用されているテレビも、ちゃっかりワイドテレビではなく4:3テレビだったりする。


●旧型ならではのメタル筐体

Clip-Onはメディアの出し入れがないという性質上、テレビ台の下の隙間にひっそりと置いておくのが似合う。実装をがんばって筐体が薄型なのも、いまあるテレビ台の隙間に置いてもらいたいと思ったのではないか。それゆえ新型(SVR-515)が質感を重視しないプラスチック筐体に変更されたのも納得できるのだが、旧型のメタル筐体もそれはそれで嬉しかったりする。また、本機の特徴である青色イルミネーションは、なんと明るさを2段階に調節可能。HDDレコーダという全くの新規開発品の1号機からここまで気を配れるのは凄いと思う。


●気合い入りまくりのリモコン

初代機というのはメーカーとしても気合いの入っているもの。ましてやHDDレコーダのような過去にジャンルのなかった製品ならなおさら。Clip-On初代機は、リモコンも本体と統一デザインの気合いの入ったものだ。表面はアルミパネルで覆われており、ずしりと重い。表面にジョイスティック、側面にテレビ制御ボタンを配し、裏面のスライドカバーを開けるとGコード用の10キーや細かな設定スイッチが現れる。ところがこのリモコン、ちょっと気合いが入りすぎて使いにくい。側面のボタンまではともかく、録画モード切替まで裏面のカバーを開けないとできない。新型(SVR-515)の一般的なリモコンの方が、使い勝手は良さそう。


●年間待機費用約1,230円

待機時の消費電力はメーカー公称値7W。すると年間の定期電力にかかる費用は…7(w)x24(hr)x365(days)x0.02(円/wh)≒1,230円か。AV機器の待機電力としては食い過ぎと思う。


●HDD換装して大丈夫なのか?

Web上のあちこちでHDDの換装成功報告が挙がっている。WesternDigitalの81.9GBに乗せ換えた例が多いようだ。が、心配が一つある。Clip-Onに搭載されているHDDはいわゆる「AV用ハードディスク」ではないかと思われる。AV用ハードディスクは一般的にエラー訂正よりリアルタイム性を重視したり、ヘッドシークを矩形波ではなく正弦波で駆動することで速度より騒音低減を優先させるなど、やや特殊な動作をする場面があるはず。

 逆にPCショップで普通に手に入るHDDは「PC用ハードディスク」なので、リアルタイム性よりデータの正確さを優先するはず。そのPC用途のHDDをAV用途に転用するとどうなるか?エラーなく運用している間はいいと思うが、読み込みエラーが発生すると「再生が止まってしまう」「録画が飛んでしまう」という現象が発生するのではないかと推測する。とはいえ、なんだかんだ言いながらもHDD仕様の差異は気がつかなかったことにして換装をやってしまうような気がする。


●後日談:やっぱりHDD換装 (2002.07.04)

WeiternDigitalのWD600ABに換装した。Web上ではClip-Onへの換装例が見あたらないのでちょっと心配。WesternDigitalは最近よく見かけるが、俺個人は今までWesternDigitalを長期で使ったことがないのでどんなものか心配。WesternDigitalのHDDの価格相場は低めだし、安物買いの何たら、にならなければいいが。IBMの5,400rpmの60GB越級は流通していないし、Maxtor/Segateは品薄。俺的には旬のMaxtorにしたかったが、結局WesternDigitalしか入手できなかった。

バラす。HDDにたどり着くまで外したネジの数はなんと29本、分解作業性の悪い筐体だ。パソコンのつもりでバラすと意外に時間をとられる。作業時間は3〜4時間を見込んでおきたい。そしてHDDを外すのにあと7〜8本。ネジは5種類あるので、どこにどれがはまっていたか記録した方が良い。ソニー製品の分解時は、基本的に”=>”という刻印のされているネジを外せばいいはずなのだが、SVR-715に限って言えば、=>マークのないネジも多数ある。とにかくアルミパネルを留めているネジは全部外す必要がある。フロントパネル部は、アルミフロントパネルと前面フレームの2ピース構造になっている。この2ピースは別々に外すべきで、俺はこれを一体化したまま取り外ししようとしてエラく苦労した。

新型SVR-515にはHDDのマウンタに最近のソニー製品ではおなじみの「開封無効」シールが貼ってあるらしいのだが、SVR-715には見当たらなかった。このあたりは初物の強みだ。

換装後、Clip-Onの起動時間が1分近くかかるようになってしまった。これではあまりにも使いにくい。さすが換装例のないHDD、マジかよ人柱かよと冷や汗かいたが、HDDのジャンパーピン設定を”Master”にしていたのが良くなかったようだ。ジャンパーを”Single”にしたところ、通常の起動時間(8秒くらい)になってほっとした。

換装後の感想。回転音は5400rpm&2プラッタなので交換前と大差ないが、電源投入時に初期化音「かかかかかー」となるのを始め、シーク音は明らかに大きくなった。通常再生時はテレビから音が出ているのでマスクされるが、コマ送り時などは「か、か、か」と確かに聞こえる。もともと付いていたQuantumはやはりAV用だったのだと思われた。バージョン表記ラベルも2重貼りだし。

組み上げた後、お約束の「ネジが一本余った」は起きなかったが、逆に「ネジが一本足りない」現象に遭遇。どこ行ったんだろうか短かいインチネジ×1本。今ごろツマの掃除機に吸い取られていたりするんだろうか。

記録時間は勿論きっかり2倍。いままでSPで我慢していたが、これからはHQが標準で使える。

天板。オールアルミ製で高級感があるが、キズに弱い。
シャーシ。他の面ほどの作り込みはなし。足も小さめ。
ネジ隠し。カッターを差し込んではがす。緑色のが粘着材。
ご開帳。筐体が薄いので実装密度は高い。
基本的に=>マークの箇所のネジを外せばよいハズだが…
おそらく何らかの対策パーツ。1個なんて初物にしては少ない方?
フレキケーブルは引くだけではずれる。

HDDとご対面。ここまででネジ28本を外す必要アリ。
内部ファンは傾いている珍しいタイプ。
CPUはHitachi SH3。


珍しい日本語のシルク印刷。同じフラッシュメモリが4個。
HDDのラベルは2重張り。AV用ファームが入っている?
交換用に用意したWD600AB(60GB)。

交換完了。ここら辺はパソコンと同じ要領でほっとする。
動作確認。フロントパネルなしでも動作する。
残量表示。きっちり2倍。円が歪んでいるのはワイドテレビゆえ。



●後日談:HDDを元に戻す (2001年11月29日)

HDDを換装して使っていたが、特殊再生中などに時々システム全体がフリーズするという現象に見舞われた。フリーズしたら本体の電源を10秒押しすればいいのだが、具合が悪い。また、電源ボタン長押しフリーズから復帰したら、録ってあった番組がスッカラカンに消えていたという事故もあった。

やはりHDDは専用品でないとマズイに違いない。そう直感したので、HDDを元に戻した。録画時間は短くなるが、番組が消えてしまったりしては使い物にならない。


●後日談:HDDを初期化する (2002年07月14日)

前回HDDをフォーマットしたときから約半年。録画中に管理領域がいっぱいであることを示す「録画ランプの点滅」現象が起きる。HDDの残り容量は十分にあるし、編集もしていないし、番組は10もないのに、だ。しょーがないので見ていない番組をVHSに落とし、HDDを初期化する。



(2004年1月26日)

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