Sony NW-S716F インプレッション




 
本機は「みんぽす」からの借用品である。


■iPodで満足していないか

ソニウオークマン、通勤途中でもよく見かけるようになった。Macユーザだと「どのiPodにするか」と考えるところだが、Windowsユーザなら「アップルとソニーのどっちのプレーヤーにするか」と検討に値する製品が出てきたと言うことだ。

これだけ世にiPodがあふれると、逆にiPodを使うことが恥ずかしく感じることもあるだろう。常にマイノリティでいたいユーザはいるものだ。それにソニーが作ったプレーヤーってどんな音がするんだろう?と気になることもあるはず。iPodだけに浸かっていて、自分が知らない素晴らしい音があるのではないか、と。

そこで今回、常用しているiPod nano 8G(第二世代)と比較して、ソニーNW-S716Fを「みんぽす」よりお借りして、iPodと比べて音質がどうなのかを比較することにした。なお、俺は外では動画再生はしないので、純粋にオーディオ機能のみの比較である。


■外観

外観。あらゆる角が丸く、手になじむ。指に引っかかりを感じるのは、ノイズキャンセリングスイッチの中央にある凸くらいだ。

ヘッドホンはノイズキャンセリング用に周囲の音を集めるマイク付きの専用品。ヘッドホンの金属製のハウジング部にある穴がマイク穴である。市販のヘッドホンを使用するとノイズキャンセリング機能は働かなくなる。

電源を入れると、まず液晶の美しさが印象的だ。ただ、iPodの画面になれていると、表示内容はやや煩雑な印象を受ける。

操作してみると、iPodと言うよりは、むしろ携帯電話に近い操作系であることが解る。iPodで使っているようなタッチパッドは一切用いていないので、胸ポケットに入れている間に勝手に音量が変わるとか言うことはなく、HOLDキーの出番はiPodと比べると激減する。キータッチはどのキーもしっかりしたものだが、音量調整などサイド部にある操作ボタン類はもう少し大きい方が操作しやすいと思った。方向キーの「上」も、液晶保護パネルとの干渉で少し押しにくい。

このタッチパッドを一切使わない操作系というのは意外と快適で、自在の高速スクロールなどができない反面、指先のブレで違うメニューを選んでしまったり、音量がドカンと大きくなると言うことはない。小型のiPodでは指先の微妙なブレに神経質になる必要があるが、物理的なボタンで操作が完結するこのウォークマンはリラックスして操作できる。


■音質

当初の目的であるiPod nano(第二世代)と音質を比較する。条件を揃えるため、ヘッドホンはiPodとNW-S716Fのどちらにも使える、手持ちのShure E4c(E4g)を使用した。(逆に、NW-S716Fの付属のヘッドホンはコネクタ特殊形状のためiPodには使用できない。)

聞き比べると、まず音の滑らかさが違う。豆腐で言えば絹ごし(NW-S716F)と綿ごし(iPod)の違いとでも言おうか。NW-S716Fと比較すると、iPodは何の化粧もしてこないで出してきた音という印象がある。次に気がついたのは低音の蹴り出し感。ブーミーではなく、しっかりしたアンプでドライブしているような低音の力感がある。キックドラムの音などで顕著だ。しかし左右のセパレーションはiPodに劣る。iPodの方が音像がヘッドホンの外にふわっと広がる心地よさがある。

NW-S716Fでは、無信号時の「サー」というノイズが気になる。最初ノイズキャンセリング機能に伴うノイズかと思ったが、ノイズキャンセリングON/OFFに関わらずサー音はするので、この機種の性能だろう。なお、ノイズレベルは夜間の室内で聞こえる程度で、屋外ではさほど気にならないレベルである。

イコライザが正しく動作するのは嬉しい。イコライザが正しく動作するのは当たり前だと思うが、iPodでイコライザをかけると、歪みっぽくなり聞くに耐えない場合がある。NW-S716Fではどのイコライザを選んでも、音の破綻はない。当たり前のことだが、iPodはそれだけ音に対していい加減に作られている面もあると言うことだ。

専用ヘッドホン自体の音質はポップス向きの、低音の量感が強調された音質。個人的には低音が出すぎる傾向にあるので、イコライザで少し低音を控えめにした方がいいかなと思った。


■ノイズキャンセリング機能

次に、専用ヘッドホンを装着して、ノイズキャンセリング機能を通勤電車で試してみる。

効果の大きさだが、電車の車内で使用すると走行音が1/3くらいになる印象だ。たとえばJR山手線の音が「ゆりかもめ」くらいになる、と言ったら言い過ぎかも知れないが、乗っている電車が高級になったような印象を受けるのは確かだ。これにより、いつもよりボリュームを上げることなく低音を聞き取ることが可能になるので、音量を下げることができ、難聴予防には効果的だろう。

しかし電車でも夏場、エアコンの吹き出し口や扇風機付近に立つのが好きな人は、ノイズキャンセリング機能は諦めた方がいい。電車ならずとも屋外でもそうだが、ヘッドホンに内蔵されたマイクに風が当たる環境で使うと、ノイズが低減されるどころか、「ボボボ」という風切り音が増幅され、騒々しい。こういった場合に対処するため、ノイズキャンセル機能はスイッチ1つでOFFできるようになっている。最初は「ノイズキャンセルなんて常時ONでいいんじゃね?」と思っていたが、OFFできるのにはやはり理由があるのだ。

電車のノイズは減るが、人の声はあまり減らない。安全の為もあるかも知れないが、電車内のうるさい会話を遮断する性能はない。声の低音成分は消えるので、音楽をかければそれなりに会話は聞こえにくくはなる。

車の往来が激しい交差点で信号待ちをしつつ使ってみると、走っている車が皆、電気自動車になったような静かさになり、楽しい。ただ歩行時の使用はだたのヘッドホンですら危ないのに、ノイズキャンセリング機能が付いているとなおさら交通事故の原因になるのでお勧めできない。


■読み仮名が自動で設定される

どういうアルゴリズムなのか詳しく調べていないが、Sonic Stageには、アーティストの読み仮名を自動的に付加する機能があるようで、その機能がうまく動いているため、NW-S716Fでのアーティスト選択が非常に容易である。この辺りの日本語ならではの問題の解決は日本の企業ならではで、iPodでは真似ができない領域だ。


■まとめ

まとめだが、iPodだらけの今だからこそ、音質で積極的にソニーのウオークマンシリーズを選ぶのは全然アリだと思う。惜しむべくは、iTunesに貯めた音楽を活用できるMac版アプリが付属しないことと、Windows版アプリの操作性や画面デザインが良くも悪くもWinodwsライクであり、煩雑でさほど洗練されていない点である。

(2007年12月25日)



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