Canon PowerShot A570 IS インプレッション




 
購入した8月上旬、送料ポイント込みならば、Amazonでkakaku.comの最安値を超えていた。基本的には母用。初期不良出しという言い訳を付けて、少し俺が使ってみた。

筐体は昨今の水準からすれば大きい方だと思うが、高齢者が扱うことを考えるとこれでも小さすぎる。本体重量は見た目に反し175gと冗談のように軽量である。

本機は単三電池2本で動くが、電池の挿入方向が電池ケースの奥の方のモールド(凹凸)で表記されているのみで、高齢者には大変読みにくい。改善を望みたい点である。ついでに挙げるなら、SDカードの挿入方向の表示も小さくてコントラストが低く、見えにくい。正しく挿入しても少し渋めのカードスロットなので、「向きが逆か?」と心配になってしまう。

取扱説明書は「基本編」と「応用編」、それとパソコンアプリの説明書の3冊構成である。「基本編」と「応用編」はポケットサイズで、普段持ち歩くなら「基本編」だけで充分という構成になっている。ただし純正キャリングポーチは説明書が入るようには設計されていない。

起動・終了時間はレンズの伸縮時間に依存する。さほど速い方ではないが、不満が出るほどではない。液晶の品質は荒く、コストのしわ寄せが感じられる数少ない箇所である。マニュアルフォーカス時の拡大表示はあるが表示が高精細ではないので、基本的にはカメラのAFを信じるしかない。液晶自体の色合いはEOS系と違い、暖色系で悪くない。

デジタルカメラなのでシャッター音や操作音はスピーカーから出るが、スピーカーからもコストダウンの香りがする。あまり積極的に音を出したくない音質だ。

撮影モードの中には、L版へのプリントを意識した「L版プリントモード」という1600x1200画素の撮影モードが用意される。このモードだと付属の16MB MMCにも26枚ほど撮影でき、ファイルサイズと実用画質のバランスがとれたモードである。しかし1GB SDカードが1,500円で買え、パソコンのCPUが軒並み2GHzを超える現在、1枚500kB程度のファイルサイズで我慢する必要はあまりないのかも知れない。

そういえばサイカさんも以前に言っていたが、ここまでメモリカードが安くなると、これをを最終保存先に選択するユーザが出てきそうな勢いである。上記のL版モードなら、1,500円のSDカード1枚で約1,600枚の保存ができる。720万画素のラージ・ファイン設定でも500枚保存できる。もはやネガフィルムのコストを遙かに下回っている。

しかしフラッシュメモリに書き込んだデータは永久的ではなく、いずれ消えてしまうことは覚えておいた方がいい。CD-RやDVD-Rに書いたデータが半永久的であると信じているユーザはだいぶ減ったと思うが、古いフラッシュメモリに書き込んであったはずのデータがアクセスできなくなった事例は実際に存在する。フラッシュメモリに書いたデータが何年持つかは半導体メーカーですら、まだ証明できていないのである。

話を戻そう。本機は手ぶれ補正、顔認識、高感度、日付写し込みなど、近年のトレンドは一通り網羅している。基本的にはオートで気軽に使うグレードのカメラだが、マニュアル撮影機能など、かつてのPowerShot Sxx系の機能が統合されており、撮影者の本気モードにもある程度は応えることができる。機能数から言えばかなりの重装備である。

画質は撮像素子の画素数と大きさを考えれば、極めて良好である。Canonの絵作りの方向はメーカー内で統一されている印象があるが、それでもEOS系に比べると色の乗りは欲張っていない。写実的だが、記憶色よりは浅い印象。Canonとしては色の乗りよりノイズの少なさが優先するのだろう。

いわゆる極薄型のデジカメ(FinePixZ5など)よりは価格的には下だが、筐体の造りに余裕があるせいか画質的には上、高級コンパクト(PowerShot G7など)のサンプル写真と比べても価格差ほどの画質差はなく、コストパフォーマンスは高い。撮影できる写真の質だけが価格の割には抜きんでており、逆に言えばその他の部分は価格相応である。触って楽しい、ニヤけてしまう、所有欲を満たす、といった類のカメラではないが、カメラにこだわりのない一般のご家庭に1台、ウチの母のようにオートボーイ1台体制からの買い換えなどには最適だろう。そして近年の顔認識などの技術により、失敗写真がずいぶん減るのだ。

この価格でこの製品を成立させられるのはキヤノンくらいしかないと思う。かなりコストパフォーマンスに優れたカメラである。

(2007年10月19日)



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