RICOH R8 インプレッション




 
本製品は、みんぽすからの借用品である。


■広報写真が良すぎた

事前に公開された本機の写真が凄く質感が高かったので、ワクテカしながら発売を待ったのだが、実は実機を見て萎えてしまった。コンパクト機というカテゴリーでは質感は高いのだが、特に上面が薄い金属を曲げて作りました的な質感がして、GR DIGITAL IIやGX100という兄貴の前ではどうしても見劣りしてしまう。R8を事前の広報写真で見ていた限りではブラックボディしか眼中になかったが、これならば相対的に質感が高く見えるシルバーもアリだなと思った。

GX100と比べてあまりにも頼りないグリップに当初は泣きそうになったが、フィールドに持ち出してみればサイズ的に両手での構えが必須となり、右手側のグリップの小ささは気にならなかった。むしろ、凹凸の少ないボディがツルッとして手持ちのポーチから出し入れしやすかった。

SDカードの挿入方向がGX100と逆向きになっているのは注意が必要で、なかなか慣れなかった。バッテリーはGX100比で微妙に薄型化されており、充電器も外見ソックリながらGX100など他のモデルとの互換性はない。バッテリーはストロボを使わない一日の撮影でギリギリ持つかどうかと言ったところ。2日以上の旅に出るなら、付属のコンパクトな充電器を携行しよう。

三脚穴はおそらく金属ではなく、軽量化に貢献しているようだが、三脚のネジで締め上げるとネジがダメになってしまう可能性がある。締め付けはほどほどにしたい。

操作系は大変洗練されている。カーソルキーの押下で表示されるショートカットには露出補正やホワイトバランスやISO切り換えなど最大で4項目登録可能だが、その1項目に登録した機能は、撮影スタンバイ状態からカーソルキーの上下長押しで呼び出すことができる。実際使ってみると、撮影の現場をよく考えた、練られた操作系であることに気がつく。従来機GX100なども操作系は大変洗練されていたが、本機R8はさらに少ないキー数で事足りるよう一層の詰めが行われている。本当に撮影の現場に持ち出してカメラを評価してるんだなと感心する。

本機にはGX100のような絞り優先モードはない。カメラの位置づけ上、割り切ったものと思われる。絞りの段数も少ないようだ。

液晶はGX100で残念だった解像感の低さも改善されており、高精細な表示が可能である。ただ画面のフォントはGX100ほどジャギーがない代わりに激細で、相変わらず見にくい。リコーは組み込み機器向けにフォントを提供するようなメーカーなのだから、もう少し拘って貰いたかった。ただ、前記したように撮影時の機能ショートカットが充実しているので、撮影中にメニュー画面のお世話になることはあまりない。

撮影画面では初期設定状態から変更してある項目(たとえばホワイトバランスやシャープネスなど)が注意喚起のために畳重表示され、ウッカリ意図しないモードでの撮影を予防するのに役立つ。

再生画像の一覧表示(サムネール表示)は20コマ表示で、見通しがいい。ただ、GX100より若干高速化されたものの、まだ快適な再生速度とは言い難い。GX100でメリットを見いだせなかった3コマ表示は廃止されている。


■歪みは確かに少ないが、ちょっと人工的な印象

本機にはソフトウエアによる歪み補正が搭載されているという噂があったが、真偽のほどは不明である。ただ言えることは、ソフトウエアによる歪み補正技術は近年珍しいことではなく、また、本機はサイズの割に異様に歪みが少ないことである。そこから賢察して欲しい、と言ったところか。

光学7.1倍ズームが搭載されているが、一般顧客相手に商売をしようと思ったら、数字上のカタログスペックは稼がないといけなかったのだろう。個人的には7.1倍はやりすぎと思う。本機の手ブレ補正は他の大多数のコンパクト機同様、フレーミング中は有効にならないようで、はっきりいって200mm領域では手持ちでは厳密なフレーミングはできない。

オートフォーカスやレンズ繰り出し速度はGX100と比べるとだいぶ高速化、低振動化されている。動体を追いかけるほどではないが、日常的には不満のない速度だろう。オートレンズバリアも装備されているので、GX100よりはチャンスに強い。ただオートレンズバリア式だとレンズの表面に指紋が付いても気がつきにくいため、意識してレンズの汚れは確認した方がいい。

画質で難を挙げるとすれば、リコーの伝統か、やはり微妙に安定しきらないホワイトバランスがまずは挙げられる。ただ、リコーのコアなファンはこの安定しないホワイトバランスすら味であると、その偶然性を楽しんでいる傾向があり、リコーを所有するのであれば、そういった寛容な気持ちは必要なように思う。

次に気になったのはレンズ周辺部の画質低下だ。このサイズのレンズなので隅々まで画質を求めるのは酷だと思うが、画面周辺部まで歪みがキッチリ補正されているのに描写自体は甘いという、不思議な描写をする。

またいくら全体的に歪みが少ないとはいえ、画面上の個々の領域をつぶさに見てみると、画面の端ではない箇所が、僅かにうねっている箇所はある。この辺が力づくで歪みを押さえた場合の限界だろう。ちょっと人工的な印象はある。

画質で気になるのは上記の点くらいで、あとはリコーらしい、良い条件にハマったときの他社を圧倒する鋭い切れ味は健在である。

内蔵ストロボはサイズから想像できるとおり光量は最小限で、屋外で日陰を煽るのにはほぼ無力と言っていい。しかもストロボを使うと小さなバッテリーがみるみる減る。

AF補助光は強めの赤い光が照射されて、撮影される側は驚くだろう。もう少し優しい感じの光にしてもらいたいところだ。


■ファイル復元などユニークな機能を搭載

本機には誤って削除してしまった写真を復元する「ファイル復元」機能がある。ファイル復元は誤って削除後、撮影を1度も行っていない場合のみ実行可能であるが、うっかりミスを救済し、従来はパソコンと専用ソフトがなければできなかった機能がカメラ本体でできるありがたみは大きい。また、撮影後の映像の色調調整やコントラスト調整もでき、ダイレクトプリント用途でも色調の調整が可能となっている。これら画質の調整は元ファイルのコピーを自動的に作成した上で行われるので、元ファイルが失われることはない。


■地道な努力が花開いた

kakakul.comランキングでも結構上位に来ているようだし、ヨドバシアキバでの陳列もリコーだけで一列確保してしまうなど、最近のリコーは侮れない人気がある。オサレなカメラとしてファッションの一環として買っていくユーザもいるとの話を聞くが、近年のリコーのデジカメは地道な努力が花開いたという印象があり、3万円台前半であれば買って損がない一台といえる。今年から来年にかけてカメラのトレンドはインテリジェント化に向かうと思うが、インテリジェントになる直前のひとつの完成型とも言えるのではないだろうか。


■撮影サンプル


プログラムオート ISO100 -0.3EV




プログラムオート ISO200 -0.3EV
動体を追いかけるのは得意ではないが、待ち伏せすればこれくらいは撮れる。




プログラムオート ISO400 -0.3EV WB=太陽光




プログラムオート ISO100 -0.7EV




プログラムオート ISO1600 -0.3EV
SS=1/32秒なのでやや手ブレ気味




プログラムオート ISO AUTO(88) -0.3EV
ゴーストの発生例。画面上部に見えるピンク色の玉。




プログラムオート ISO100 -0.3EV(参考:SS=1/2秒、三脚使用)



(2008年5月3日)



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