Audi SQ2。国産で言えばToyota C-HRや、Mazda CX-3、Honda VESELの大きさに相当するAudi Q2の高性能バージョンで、価格は599万円もします。搭載されるエンジンはAudiでは搭載実績の多い2リッター直噴ターボで、チューンにより出力は300psに達し、トルクは2000rpmの段階で既に400Nmもあります。これに組み合わされるのは7速の湿式DSG:Sトロニック。ホイールは19インチですが、アウディドライブセレクトの設定画面を見る限り、アクティブサスペンションは搭載されていないようでした。
お借りしたのはナンバー登録してから1か月もたっていない、おろしたての車体。走行距離は僅か400km。これは慣らし運転しろってことでしょうね。
イグニッションをONするとご多聞に漏れずタコメーターとスピードメーターが振り切れる演出があるのですが(うちのトヨタ・パッソちゃんにもあります(笑))バーチャルコクピット(液晶パネル)の描画フレームレートが足りておらず、カクカクするのがAudiらしくないと思いました。
300psもありながら、普段の街乗りでのアクセル開度ではさほど暴力的な感じはしないのですが、いざ踏み込めばどこまでも青天井に加速する感じです。昔懐かしいドッカンターボとはまた違うのですが、リニアになったドッカンターボという印象。なお本国のスペックシートによると最高速は250km/hとのこと。もっと出そうな気がしますが、おそらくSUVのボディ形状が空力のネックになっているものと思います。
最初の交差点で曲がるとき、ステアリングのクイックさに驚きました。これは山坂道に持っていったら楽しそうだと早速週末に山へ。借り物かつ慣らし運転中なので無茶はできませんが、やはりよく曲がるし、クライムヒルではA3(1.4TFSI)と違ってコーナーを抜けた後の加速もダルくありません。ダウンヒルでは太いタイヤと接地感の確かなサスペンションで不安なく駆け下りられ、まるで自分の肉体の運動能力が上がったように錯覚します。これは道楽車ですね。
ただ、ベースはあくまでQ2。パワーはありますがすべての面でノーマルのA3を超えているわけではないことは気に留めておきたいところです。 ペースが上がっているとまるで羽根が生えたかのような乗り心地なのですが、市街地走行ではスポーツ系のサスペンションであることを意識させられます。ただ、他の車のトレンドではスポーツ系といえども低速時にはしなやかなことも多く、SQ2 は小型のSUV形状との両立でこうせざるを得なかったのかと推測します。
燃費は高速道路や一般道、山坂道を走って8.5km/L程度でした。ハイオクです。
そもそも自分はAudiのQシリーズ(SUV)を運転するのが初めてだったのですが、Audiの文法に従った調度品(内装)でありながらややアップライト気味に座らせる姿勢、膝も立ち気味になる運転姿勢には1週間足らずの借用期間では違和感は拭えませんでした。やや縦長の空間に直立気味に体を収める感じですね。着座姿勢が同じインプレッサとXVのような関係だったら違和感も少ないのでしょうが、Qシリーズは明らかにセダン/ハッチバックと違う専用設計ですので。
とはいえ違いはその程度で、操作性やその使い心地はAudi車そのものであり、A3から乗り換えても路頭に迷うことはもちろんありません。ウインカーレバーの先端にある車線自動認識のスイッチが当初見つけられなかったくらいです。
車線自動認識と言えば、試してみましたが確かにこれは「アシスト」であって「自動運転」ではないですね。たとえば以下のような現象が見られました。
- センターラインが白線ではなくポールの場合、ポールの先端の白線を認識するのか、かなり車体がポールに寄ってしまう。
- 隣に大型車がいても関係ない。自分でステアリングを切る場合には大型車の横を追い越す場合は少し離れ気味に並走して追い越すが、そのような制御はしていないので大型車の横スレスレを通るケースがありドキドキする。
- 複合コーナーで制御が発散しそうな場合がある(これが一番危険)。すなわち車線の右端、左端にぶつかりながらジグザグ走行してしまう状態になりそうなことがあった。スピードが出ていると事故になりそう。
- そもそも車線の中央を検出する機能ではなく、車線の端から逸脱することを防止する機能。
こういったことがあるので長時間ステアリングから手を離すと警告が表示されます。速度が落ちた状態での「トラフィックジャムアシスト」は試す機会がなかったのですが、速度が出ている状態ではあくまで「車線逸脱防止」であり「自動ステアリング」ではない点は留意が必要です。
そういえばオーディオの音が変わってるなぁと思い、簡易的ですがホワイトノイズの周波数特性を測ってみました。SQ2だとこんな感じです:
オプションの「Bang & Olufsenサウンドシステム」は付いていないと思いますが(スピーカーにもバッジが付いていなかったため)この凸凹さが変な音感の原因になっている印象はありますね。最初バイオリンを聞いたときは「うっは!スゲーいい音!」と思ったのですが、人の声がまるでダメであることが発覚。もしかして、エキゾーストノイズをスピーカーで演出する機能が備わっているのですが、それが音楽に対して悪さをしていたりするのでしょうか。もしこれでB&O搭載だったら上級者すぎると思いますが。
同じ条件でA3 Sportsbackだとこんな感じ。こちらも純正標準のオーディオシステムです:
まぁ、普通ですね。聴き慣れているせいもあると思いますが、違和感はありません。
ちょっとSQ2のオーディオ特性は納得できないかも。試しませんでしたが、イコライザで何とかなる範疇でしょうか?
総じて、都会の舗装のいいところで使う道楽車です。大きさも手頃、ドア4枚ですので個人事業主が経費で落とすのも無理がないでしょう。一皮むいたらスポーツカーですけどね。
コメント
クマデジタルさんの予想されたように、ボディ形状に由来している可能性はもちろんあるかと思いますが、ドイツ本国のカタログで最高速度が250km/h表記の場合、通常はリミッター作動時の最高速度を示している場合がほとんどで、エンジン本来の性能とは別の値になっていることがあります。このモデルに関しても、いくつかの雑誌での性能紹介時に、リミッター制限下での最高速度という表記が見られました。
公式な文書は見つけられませんでしたが、BMW、Mercedes、Audiの各社(MやAMG含む)で、実用上の最高速度に関する自主規制があり、それが現在のところ250km/hのようです(Porscheは加わっていない)。このモデルより大出力&大排気量のモデルでも、カタログ上の最高速度は250km/hになっているものは多々見つけられます。また、カタログ上で最高速度が250km/h以上となっていても、これらメーカーのモデルの場合にはやはり、250km/hでリミッターが作動するようです。
リミッターの制限は所有者からの依頼によりメーカーで解除出来ますが、以前はメーカーの主催する講習への参加が条件だったりしたものの、現在は追加料金で解除のことが多いようです。
なるほど、250km/hにはそういう意味があるのですね。300psもあるので空力がアレでも250km/hなんて全然出るだろうという気はしました。