Contemporaryラインの 17-70mm は従来製品に対して最新の設計、最新の素材などを投入して、従来比30%減の小型化を実現しています。山木社長自身もお気に入りで、実際に購入して愛用しているとのこと。
Sportsラインの 120-300mm F2.8 は光学的には従来の設計を踏襲しながら、防塵、防滴、ソフトウエアカスタマイズなどのフィーチャーを導入したもの。光学系を踏襲したのは既に現行モデルの光学設計が充分に優秀で、いま最新の設計技術でやり直してもおそらく同じ解に辿り着くだろうとの判断から。
ソフトウエアカスタマイズ機能は 120-300mm F2.8 のみならず、今回のラインすべてに導入されるもので、現在考案されているのは焦点距離別のフォーカス位置微調整や、ファームウエアアップデートなど。そして望遠系のレンズではフォーカス範囲のリミッターなども検討されています。しかしフォーカス範囲をリミットしてしまうと「それ専用」のレンズになってしまい使いにくいのでは?と思いましたが、レンズ側に「ユーザーカスタマイズ1」「同2」のような切替スイッチが設けられるようです。
カスタマイズはレンズに「USB DOCK」という、マウント部に取り付けるUSBアダプタを介して行いますが、こういった見た目になります。いや、何というか、レンズからUSBケーブルが生えているのは時代とは言え、シュールですね(笑
なおUSB DOCKを駆動するカスタマイズ用ソフトウエア「SIGMA Optimization Pro(SOP)」は無償公開予定とのことで、これはどちらにせよUSB DOCKとペアで運用しなければならないソフトだと思うのですが、単体で無償公開というのはどういった意図があるのでしょうか?そこを聞くのは失念しましたが、もしかすると「どういったことができるか」をソフトでまずは把握してもらうとか、あわよくば「プロファイル」のようなものだけを自分で作成して、シグマに持ち込むと書き換えてくれるサービスが生まれたりするのか?なんて想像も広がります。
さて、紹介が最後になりましたがArtラインの35mm F2。今回のイベントの目玉(レンズだけに)ですが、どうですかこの佇まい。これがあのSIGMAの製品なのか!?と刮目するほど高品質な製品に仕上がっています。この明らかに一皮むけたデザインはau携帯の「iida」シリーズにも携わった工業デザイナーの岩崎一郎氏によるもの。携帯電話と言えば最近は「スマホ化」で、ただの板状になってしまった電話をどうデザインするかとなると腕の見せ所なわけですが、レンズのような「ただの筒」も、スマホに通ずるチャレンジャブルな課題とのこと。
今回のデザインは「デザインしないデザイン」を目指し、今までのように「飾り気」を入れるのではなく、ある種のストイックさも感じられるデザインに仕上げらています。フードの根元にゴムパーツを貼り付けて手触りを良くしたり、単純なモノトーンではなく一部に光沢を配したりと、所有欲をそそられる仕上がり。今までのSIGMAレンズと言えば少し前だと「爪が研げる」とか「金ラインが剥がれてくる」など純正品と比べて価格相応に見劣りするものでしたが、これは別次元。初めて心の底から「欲しい」と思えるSIGMAレンズに出会えました。
ただ、35mm F1.4 というのは設計がすでに追い込まれていて各社とも「名玉」が多い分野でもあり、そこにあえて乗り込むためには、単に光学性能が優秀なだけではなく、SIGMAならではの味が必要だろうと。そこで同社が着目したのは「軸上色収差」。ピントが合っているところから見て、前後のボケ部分に対する色収差が少なくなるように追い込んだとのこと。想像ではかなりクリアな描写になりそうですが、具体的にどういう描写になるのかはこの後のハンズオンで試してみたいところです。
また今回からレンズに「モデルイヤー」の刻印が導入されました。これは各個体の「製造年」ではなく「最初に世に出た年」を表します。というのも、同じ焦点距離、同じF値でも設計の古い「オールドレンズ」を好む方も根強くおり、「最新の設計がいいのは解ってるんだけど、○世代前のレンズの味が好きなんだよね~」というようなケースで、「○世代前」などではなく「012」で「2012年式の」と直接示せることを目指しているそうです。
しかしこの35mm F1.4、もちろんこれだけの立派な製品ですから、価格設定もよく考えられています。たとえばキヤノンEFマウントで言うと、
EF 35mm F2 約3万円
EF 35mm F2 IS USM 約7万円
EF 35mm F1.4 USM 約15万円
という純正ラインナップに対し、
35mm F1.4 HSM 約9万円
という、見事に「純正メーカーがやっていない」価格帯に投入してきています。純正メーカーがやっていないと言ってもそれは価格だけの話で、スペックだけで言えば15万円のEF 35mm F1.4 USM相当なわけです。そして単に安かろうではなく、好みの問題で言えば純正よりこっちの方が格好いいと感じる方も多いであろうデザイン。これはかなり売れる気がします。
山木社長のプレゼンに続いて、フォトグラファーの塙真一氏が登場、私は以前からtwitterでフォローさせて貰っていたのですが、実際にお目にかかるのは初めて。アイコンの写真からもっとクールな方を想像していたのですが、実際にはとても物腰が柔らかく、場を和ませたり、レンズを欲しくさせるのが上手な方(笑 でした。
国産ベストセラーミニバンに乗る塙氏は「私だって2シーターのクルマとか欲しくなりますが、でもクルマは乗りたいからといって買えるものではありません。2台とか置けませんからね。でもレンズは違う。その気になれば全く別の性格のものを買うことができるのです」と塙氏。
また、塙氏は山木社長に「キヤノン純正の35mm F1.4と比べてどうですか?」という、とても聞きにくい質問をぶつけました。応じた山木社長は「先も言った通り35mm F2は名玉が多いので、シグマの方がすべてに渡って優れていると言うことはない。が、劣っているところもない。そして、部分部分では勝っているところもあると考えている」という率直な回答。自社製品についてここまで冷静かつ自信を持って語れるというのが、山木社長の魅力だと思います。
次回は、35mm F1.4のハンズオンです。
レフ板係、その名は黄色いガンダム。
お陰様で良好な光線条件下で撮れました。
以下、次回。
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コメント
はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいております。
そしていつも思うのですが、クマデジさんの写真は
どれも本当に素晴らしいですね。
今回のシグマレンズの写真も存在感がすごいですね。
一体どのように撮ればこんな風になるのかご教示いただきたいくらいです。
私もいつかこんな写真を撮れるようになりたいと思います。
それでは今後も楽しみにしております。
恐縮です。
1つコツとしては、黒いものは露出補正をマイナス方向に、
白いものは露出補正をプラス方向に、でしょうか…。
今後ともよろしくお願いします。