なぜ機内食にこだわるのか

航空機の機内食。そもそも機内食が出るか出ないかから始まって、出される順番、タイミング、見た目、味、分量、温度、追加オーダーの可否、はては食品添加物の量まで、様々な評判をよく目にする。

みなさん、なぜそんなに機内食にこだわるのだろうか。

航空会社によれば、機内食に対するお客様の期待は高いそうである。確かに私だって滅多に航空機には乗らないが、機内食は楽しみである。おいしい機内食とそうでない機内食があるのも解る。

でも航空機の中ではなく地上で食べる料理の幅はそんなものではない。メニューの自由度は高いし、味の幅だって広い。航空機の中でしか食事をとる時間がないという多忙な方ならともかく、時間をとれる普通の方が満足な食事をしたいのであれば、限られたサービスしか提供できない機内食に期待するのではなく、飛行機の中以外の場所ですればいいのにと思う。

それとも人間には、移動空間の中で食べることによる何らかの快感があるのだろうか。航空機以外でも、確かに列車の中にもレストランはあったし、船でのディナークルーズは高級なサービスとして認知されている。遠足バスの中でおやつを広げたがる欲求を持つ人は多い。

いや、それとも、飛行機という密閉空間では食べることしか楽しみがないから、人々は機内食に期待してしまうのだろうか。

または、機内食のコストは見えないから、タダ飯のように見えてしまい、期待が大きくなるのだろうか。あれが航空運賃とは別に料金を徴収されたら、「この程度のメニューなら、わざわざ飛行機の中で食べようなんて思わない」という人は増えそうだ。

航空機に滅多に乗らない方にとっては、高い運賃を払って移動するいわば「晴れの舞台」だから、つい機内食にも期待してしまう…という仮説も立てたが、どうも傾向を見ていると、飛行機に乗る頻度が多い方が機内食への要求が高くなるように見えたので、この仮説は却下する。
ただ、昔有名だった芸能人がオーバーブッキングでたまたま座席のアップグレードを受けて、ビジネスクラスの食事と自分を一緒に撮った(CAに撮ってもらった!)写真をブログに掲載しているのを見ると、「晴れの舞台」説も完全には外れてないかな、という気もする。

一方、航空会社の事情もあるのだろう。外から変な食べ物を持ち込まれるよりも、入念に検討された一定水準以上の品質のものをお出しするからこれを食べて欲しい、という思いもあるのかも知れない。外から持ち込む方式になってしまうと航空会社側の意図するタイミングで食器回収などができず、離着陸時にフォークや箸が宙を舞うことになりかねないのかも知れない。また、強烈な臭いの食べ物を持ち込まれて困ったことになるのを防いでいるのかも知れない。

いやほんとに、機内食に対する人間の関心というのは興味深いものである。

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コメント

  1. KM より:

    いつも楽しみに読ませていただいております。
    機内食ってアメリカ国内便はみんな別料金です。ホノルルから西海岸、もしくは西海岸から東海岸のように8時間を超えるフライトでも食事なしなので、ほとんどの人が買ったものを持ちこんでいます。

  2. Kumadigital より:

    コメントありがとうございます。
    そうなんですか。多民族国家だからなかなか画一的なメニューは出しにくいんですかね?
    むしろ日本がサービス過剰と言えるかも…?

    制約の多い機内食に拘りを持つ方が多いのが興味深いんですよね。そんなに拘るならフライトの前後にいい食事すればいいんじゃないか?とか(笑

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