メカデザイナーズサミット:なぜジオンのMSは魅力的か?

サイカ先生に教えてもらって、東京都稲城市主催の「メカデザイナーズサミット」のトークイベントに行ってきました。これは大河原邦男氏がホストを務めるもの…のはずだったのですが、実際のホストは川口克己氏(元ストリームベースのメンバーで、現在はバンダイ(株)社員、いわゆる川口名人)でした。なので、特に前半、大河原氏の発言が少なかったのが残念でした…。



大河原氏、川口氏以外の他のパネラーは、

寺岡賢司氏:「ガンダム00」でティエレンをデザインし、線の多さで作画監督に怒られる(笑
石垣純哉氏:「Vガンダム」「ガンダムW/X」などに参加、「マクロスF」のバジュラも担当
海老川兼武氏:「ガンダムエクシア」の生みの親
馬場俊明氏:バンダイ(株)マーケティング/商品企画担当

という面々。撮影禁止でしたが、これは版権にうるさいモビルスーツデザインを投影する関係上、仕方ないでしょうね…。

観客は挙手によると1960年代~1970年代が中心で、それゆえ馬場氏の「川口氏と大河原氏の昔話が聞けると思った(のに)」というのは多くの観客の気持ちを代弁していると思いました(笑 が、話のほとんどは「ビルドファイターズ」が中心。ま、まぁ、ビルドファイターズも悪くはありませんが、やっぱ昔話を聞きたいよねぇ…(笑

しかし登壇した大河原氏を脅かす若手デザイナーは、皆ガンダムに多からず少なからず関わっており、そういう意味では大河原氏の言う「ガンダムがメカデザイナーを育てた」というのは真実だと思います。

ただ、そのデザイナーの活躍のさせ方という面では、現在「ビルドファイターズ」ではバンダイを中心にして同社の都合でデザインが発注されているようで、たとえばガンプラの派生モデルを作るにしても、「このランナーに収まっている部品だけを変えて新型を作りたい」という要求がデザイナーに出されるのだそう。ううむ、それはプラモメーカーの都合すぎるぞ…。まぁ初代ガンダムも玩具メーカーからの要求は色々あったと聞きますが、それでもその要求の多さ、そして仕事の断片化と、作品のつまらなさというのは相関関係があるような気はします。

大河原氏曰く、今まで多くのガンダム(や、他のロボットアニメ)に携わってきたが、いずれも部分的に発注されているのであまり自分の作った作品という感じがしないそうです。現役を引退する前に、一度自分の思いの丈をぶつけたアニメ作品をもう1本くらい作ってみたいとのこと。「ガンダムのことを一番知らないのは私」という発言もあり、それはあながち謙遜ではないのかも知れません。

これからはアニメよりも実際の製品をデザインしてみたいと大河原氏。同い年の戦友・安彦良和氏を引き合いに出して、「安彦さんは絵がうまい。でも溶接はできない(笑 旋盤も回せない(笑 そういうところでバランスを取っている」。台頭する新人に対しては「手塚(治虫)さんでも新人は怖かった。めぼしい新人が出てくると『どんな人?』って聞き回ってたしね(笑 新人でも同じ時代で仕事をするライバル」と称し、大御所でも気が抜けない一面を感じさせました。

面白かったのは質疑応答タイム。

「うまくいったデザインは?」と尋ねられた大河原氏は、
「シャアザク、ハロ…かな。ハロはザンボットから生まれたんだけど、ザクは純粋に稲城から生まれた。」

「どうしたらメカデザイナーになれますか」の問いに対しては、
「明日にでもなれるよ、名刺作って(会場笑)資格があるわけじゃないんで。でも、実際のところは制作プロダクションに知り合いがいるのがいいかな…。でも昔に比べたら今は簡単になれると思う。インターネットで作品発表の機会もあるし」と応えました。

しかしその一方で、「ただ、(ロボット)1体なら誰でもデザインできる。アニメは僕らがやり尽くしてしまった。これから個性を出すのは本当に難しい。美大の学生10~20人見て上手いのは1人。その他は真似がうまい人」とも。要は、発注側の求めに応じて1体のみならず何体でもデザインできる引き出しの多さが必要なのでしょう。

「何でも見てやろう(という意気込みで)なんでもいいから頭の中に詰め込む、仕事は必ず受ける、(納期までに)こなす」という具体的なアドバイスもあり、最後に「私はいつまでできるかわかりませんが、一緒に仕事をしましょう!」とエールも贈りました。ああ、いいなぁ。会場で何人かの心に火が付いた瞬間を目撃したような気がします。

「(ザクなど)敵メカに魅力的なものが多いのがなぜか」の問いも。
大河原氏曰く「主役メカはいろんな人が介在して調整が入る」。ああ、それは大企業の製品につまらないものが多々あるのと同じ理由ですねぇ…。「でもガンタンクのように3体目ともなると適当ですが(会場笑)」

「(ジオンのモビルスーツは)(富野)監督からはモノアイだけがルールで、自由にやってよいと。(そうなってくると、あとは)私の意地です。なんとか主役よりいいものを作ろうとしてしまう」
その結果生まれたのが数々のジオン軍モビルスーツなわけですね。
「バイファム、レイズナーの頃になるとバンダイがうるさい(笑 敵メカは自分の個性が自由に出せる」

にしても、「ザクアメイジング」が「名人ザク」(メイジン・ザク)に由来していたのは知りませんでした…。また、「今週のビックリドッキリメカ」は「ギャラ関係なく楽しい。あれ給料いらないで描ける(笑」と大河原氏。

最後の質問「自分がデザインしたメカに搭乗したキャラで一番印象に残っているのは?」については「シャア様、アムロ…でしょうね…」と期待通りの回答。「もうキャラと本人が一致しちゃってるんですよ。イベントなんかでずっと一緒ですし、同じ時代を生きてきたから」。駅前に?モビルスーツの銅像を建てる予定があるそうですが、「除幕式には彼らに出て欲しいね」とも。

メカニカルデザイナーという仕事の実際のところが聞けたイベントでした。



ところで会場となった「稲城市立iプラザ」(東京都)ですが、



いくらも離れていない場所にSIGMAの本社(川崎市)があるんですね。

なるほど、どちらも東京と神奈川の境界線付近なんだ…。

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