Apple Vision Pro 体験して涙するまで

時間に余裕のある感じで渋谷に行ったので、予約してApple渋谷で Vision Pro の体験をしてきました。

 

(顔認識で奥にフォーカスが引っ張られてしまった失敗写真)

 

すでにあちこちでレビューされている通りなんですが、まず凄いなと思ったのは、視界に浮かんでいるアプリなどのUIの安定性。本当にビシッとそこに固定されていて、頭を微動させても浮かんでいる位置がズレることが全くありません。店員さんの話だと描画のフレームレートが高いため頭の動きに対する遅延がないとのことですが、それだけではないと思います。Vision Pro内のモーションセンサーだけではこんな精度が出せるとは思えず、おそらく、フロントカメラで撮っている景色でパターンマッチングをして、その結果をモーションセンサーからの出力に加味して頭の動きを高精度に検出することで、ビシッとしたUIの位置の固定が実現できているのではないでしょうか。

この処理はかなり重いようで、この「見ている景色の中にUIが浮かんでいるモード」だとバッテリーの持ちが2時間ですが、全視界で動画再生をするとバッテリーが2.5時間持つとのこと。それだけUIを浮かしておくのは大変と言うことですね。

デモコンテンツを色々見せてもらったのですが、恐竜が迫ってくるものとか、高いところの綱渡りとかは既存のVR装置(PSVRなど)に対してもそれほどアドバンテージを感じませんでした。物理的な装置を使っている8年前のお台場のVR ZONEのほうが体験としてはよほど凄いです。

ですが気持ちを持って行かれてしまったのが、3D動画(空間再現ビデオ)。目の前にバースデーケーキがあって、家族(Appleが用意したコンテンツなので外人の家族ですが)が誕生日を祝ってくれていて、家族らがケーキのロウソクをフーッと吹き消してくれます。その煙がこちらに飛んできて、まるで煙の匂いを錯覚するようなリアリティでした。その空間に本当に自分がいるようで、うっかり「人生の晩年にこの機能を使って子供たちが小さかった頃の誕生日パーティの3D動画を再生するシーン」を想像してしまって、涙が溢れてしまいました。

もちろん過去に3D動画を撮っていないのでそれは実現不可能なのですが、これからはそうやって「もう会えなくなった小さかった頃の子供たち」や「若かった頃のパートナー」「故人」に会える可能性が出てきたわけです。

よくマンガとかアニメで3Dホログラフィで騙されたり感情を揺さぶられる話があるじゃないですか。まさにあれですよ。「やめろ!罠だ!」「罠でもいい!罠でもいいんだッ!」のあの気分ですよ。自分の肉親でもない他人の誕生パーティのビデオを見てボロボロ泣くってそういうことですよ。

きっと、いま当たり前に存在する「写真」を初めて見た人類も同じ感情の揺さぶられ方をしたのかなぁとか想像をしてしまいました。そういう意味では、新しいメディアの誕生の瞬間を見てしまったような気がします。

もちろん3D動画自体は既存の技術ですが、それはあくまでも「立体に見える」レベルであって、Vision Proの凄いところは、「まるで自分がその場にいる」と錯覚させられるところまで、デバイスが高精度に制御されているところだと思います。動画再生のシンギュリラリティと言っても過言ではないのでしょうか。

冷静に考えるとこの60万円近いデバイスを使って感情を揺さぶられたのが3D動画再生だけかよ、と考えるとえらくコストパフォーマンスが低いように思いますが、このデバイスは製品がどうのと言うよりは「心を揺さぶる技術」そのものにお金がかかっている気がします。

他のコンテンツとしてはPSVRと違って画面奥方向にビュンビュン進むようなものは今のところ皆無なので、それが物足りないところではありますが、まだApple的にはそれによる「VR酔い」を解決できていないのではないかと思います。

あと感心したのは「音」ですね。イヤホンを装着していないのに耳元でかなりいい音がします。音漏れはそれなりにしているのではないかと思いますが、イヤホンをしなくていいというのは快適ですね。これもVision Proならではの体験かと思います。

今のところAppleでは予約さえ取れれば何回でも体験OK(無料)とのことで、すでに5回とかデモを体験してるお客さんもいらっしゃるとか。そうなるともう買った方がいいんじゃないのwwwと思いますが、確かに「一度は体験しておいて損はない」というのは納得です。Web記事で画面イメージはわかりますし体験したつもりにもなれますが、「その空間に実際に入る」という体験は Vision Pro を被らないと得られませんので。

1年前のポストですが、やっぱり涙する人はいるんですね…自分だけでなくてよかった。

ちなみにiPhone 15 Proで撮った3Dビデオと、Vision Proで撮った3Dビデオでは再生クオリティに差が出ます。iPhone 15 Proで撮った方は画角が狭く、周囲にぼかしのエフェクトが入ってしまいます。カメラの物理的な間隔が狭いので仕方ないですが、「いまiPhone 15 Proで撮っておけば将来きっちり再生できる」とはならなさそうです。いま現在で高いクオリティで残すなら Vision Proでの録画がマストです。

そりゃこういうレンズも出てくるわけです…。納得しました。

 

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