菊池美範さんとは、とある写真サークルを通じて親しくさせていただいていますが、実は出会う前から私は菊池さんの仕事を目にしていました。デジタルカメラマガジンの別冊「EOS 完全ガイド」シリーズ。そこでクリエイティブディレクターを務められていたのが、菊池さんでした。
その菊池さんが、書き手として、そして編者として一冊の本を上梓されました。ジャン・メルモーズの遺稿『我が飛行(Mes Vols)』です。
ジャン・メルモーズは、「翼よ、あれがパリの灯だ」のリンドバーグと同時代に活躍した航空史上の重要人物ですが、日本ではまだ広く知られているとは言えません。菊池さんは、彼の遺稿である「Mes Vols」の和訳をずっと待っていたそうです。しかし、待てど暮らせど誰も翻訳してくれない。
翻訳著作権の期限は切れている。本を編纂する能力もある。だったら自分でやるしかないーー
この衝動が、本書の原動力です。菊池さんは1年をかけてフランスの博物館などから資料を入手し、持ち前の人脈を駆使して、ついにこの「魂の記録」を日本語で読める形に漕ぎ着けました。
あとがきの表現を借りますが、この「Mes Vols」という本、原書の出版時にはすでに著者のメルモーズは亡くなっていたため、初版にはフランスの政治指導者フランソワ・ド・ラ・ロックが追悼の一編を寄せ、2011年の復刻版ではギルベール・ルイが序文を記しています。これらはいずれも、著者がこの世を去った後に、残された原稿をまとめ上げ、読者の元へと届ける役割を果たしてきた人々です。
そして今、この日本においてそのバトンを受け継ぎ、日本版の「著者不在の本を手に取る役割」を担ったのが、菊池さんだったというわけです。
上品な青の中間色で彩られた表紙には、菊池さんのセンスが光ります。Amazon POD(プリント・オン・デマンド)での出版とのことですが、なかなかやるな Amazon と思いました。このエントリに掲載されている写真の色味は調整したのですが、現物の本書の色味を再現できていません。現物はもうちょっと鮮やかです。
なお本書の後半2割ほどはマニアックな資料集となっています。
本書は、現代の航空物流の礎を築いた先駆者の伝記として、すべての物流に携わる人々に捧げたい一冊だそうです。私自身は物流関係者ではありませんが、本書から滲み出る「人とメカの関係性」に共感しました。特に、そのメカが「乗り物」であるときに生まれる特有の絆や情感は、命がかかっているかどうかという程度の違いはあるにせよ、乗り物を愛する者にとって深く沁みるものがあります。
本書を入手する方法は3つありまして:
(1)Amazon Kindle版(電子書籍)
(2)Amazon POD版(注文ごとに印刷されるオンデマンド版)
(3)書店流通版(書店でお取り寄せ注文)
このエントリに掲載されているのは「書店流通版」です。これにはAmazon POD版にはない「専用のカバーと帯」がついているのですが、この装丁版は期間限定、あるいは早期に終了する可能性があるとのことです。




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