当時の総理大臣、菅直人氏が公開に合わせてすごい言い訳していたり、安倍政権の陰謀映画みたいなことで話題になっていた映画を見てきました。
「電源喪失は津波によるものではない」
→ちょっとこの映画を見てこう判断された方は理解力の足りなさを反省した方がいいんじゃないでしょうか…。そんな描写にはなっていないですよね…?
「総理が現地入りしていたからベントが遅れた」
→上に同じ。
「総理はこんなに年中怒鳴っていない」
→そうなのかも知れません。まぁでも映画の演出の範囲内ではないでしょうか。
総理自身も命を賭けてる覚悟の描写もあったし、これのどの辺が安倍プロパガンダの映画なんだろうと不思議になりました。
まぁ事前に聞いていた世間の反応に対しての答え合わせはこの辺にして、純粋に映画としての感想を。
自分はあの日あそこで何が起きていたかを知っているわけではありませんが、信じるに足る映画のように感じられました。綿密な取材に基づいていることが分かりますし、政治的に右とか左に偏っている印象もありません。
この映画のことを聞いたときには「そんなの映画にできないだろう」と思いましたが、蓋を開けてみれば後世に伝える映画として必要な映画だな、と思えるようになりました。
冒頭からアクセル全開で、若い被災者の中にはトラウマが蘇って宜しくないのではないかと思います。本編中も何度も心臓に宜しくないシーンがあるので、このままでは将来テレビ放映できないかも知れません。公共の電波に流すなら少し音響周りをマイルドにする見直しが必要な気がします。それくらいの迫力の音響と映像です。うちのムスメとか観たら、泣きそうな顔して冒頭一分でテレビ消しそうです。
細かいところでは、DELLのロゴマークはそのままなのに、東電のロゴマークが置換されていたのは少し興ざめでした。あそこは本当の東電のロゴマークだったらさらに凄みが出たののにと思います。米軍の「トモダチ作戦」が少しばかり描かれますが、一番ヤバいロナルド・レーガン空母を使った作戦部分は米国で被爆裁判沙汰になっていることもあってさすがに描けなかったでしょうか…。皆川猿時さん(グループ魂)が佐藤浩市さんと並んだときにはここでもクライマーズ・ハイかよ!と思いましたが、皆川猿時さんはいわき市出身なんですね。
キャスティングは女性陣に美人さんが多すぎるのが気になりました。災害現場で浮いています。
ただ、ラストシーンでは変に締めたりしないので、今現実がこの映画の地続きになっていることがリアリティを持って伝わりました。
原発事故については、東電は加害者だ、加害しておいてえらい目に遭ったフリなんて如何なものか、と思われるかも知れません。また、ある日突然帰る家や故郷を失った方々のやるせなさもあるでしょう。何で自分はこんな目に遭ってるんだろうと。そんなとき、現場で何が起きていたのかを知ることは、少しばかりの癒やしにもなる場合もあるのではないでしょうか。被害者がこの映画を「ぜひ見て欲しい」という気持ちも分かる気がします。
人間ひどい状況に陥ったとき、「俺たちは何か間違ったんだろうか」と自問することがあると思います。この映画でも終盤に福島第一原発所長の吉田昌郎氏と、福島第一原発当直長、伊崎利夫氏の間でその会話がなされます。
原発賛成派、反対派、どちらにとっても、「俺たちは何か間違ったんだろうか」に対するこの映画での答えには、納得してもらえる気がします。奇しくもコロナウイルスの脅威にさらされている今だと、さらにその答えに重みが増す感じがしますね。
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