村田沙耶香「消滅世界」を一気読みして脈上がりっぱなし

カメラ仲間のkyuuさんのtweetで、凄い本と出会ってしまいました。

若者の「交際経験がある」率の低下、2次元キャラを「嫁」と呼ぶ人たちを許容する社会、AVの異常なクオリティアップとアクセスの容易さ、より「清潔さ」が喜ばれる社会、個の尊重、貧困の連鎖の裁ち切り、子供は地域で育てるもの?、人口減少問題への解決策…これらすべての事象をリアリティのある1つの筋の通ったストーリーに収斂させた「日本の未来の予言」がここにあります。上記のような社会問題の1つ1つはニュースなんかで見ても「ああそうかぁ」とは思いますが、それらを繋いでいくとこうなるよね?という、自分でも怖くて無意識に目を背けていたものを「ほら目を開いて見てみろ!」と押しつけられた気分です。

自分は若い頃に強く「家族の形成」に憧れた時期があり(今でも家族は大事ですが)、だからということもあると思いますが、この本を読んでいる間、終始脈拍が上がりっぱなしで1日で一気読みしてしまいました。自分が「普通」だと思っていたものは、人類の歴史の中ではちっとも普通ではなかったと言うことに気がつかされ、さらにはガンダムの世界でどうして家族の形が現代のままなの?とさえ思えてきてしまいます。

表紙は朽ちた世界にたたずむ花嫁ですが、これを想起される記述もあり、なるほどなぁと深く感心。


消滅世界

Amazon「内容紹介」より:

世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
そんな世界で父と母の〈交尾〉で生まれた主人公・雨音。彼女は朔と結婚し、母親とは違う、セックスのない清潔で無菌な家族をつくったはずだった。だがあることをきっかけに、朔とともに、千葉にある実験都市・楽園(エデン)に移住する。そこでは男性も人工子宮によって妊娠ができる、〈家族〉によらない新たな繁殖システムが試みられていた……日本の未来を予言する衝撃の著者最高傑作。

ただ、ラストシーンが「ここで終わり!?」と思ってしまったのも事実。作品としてはあそこで終わらせるのが一つの形式美のようなものはあると思いますが、もうちょっと主人公のお母さんの予言を生かして欲しかったかな。ここからそれこそタイトルが「楽園追放」(笑)のようなストーリー展開も考えられるようには思います。

中身が中身だけに映像化は難しいとは思いますが、これは本というフォーマットだけでは収まらない傑作のように思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました