富士登山<前編>

一生に一度は登ってみたいという単純な動機で、富士山に登ってきました。子供が自分たちで留守番できるようになってから夫婦で行こうと思っていたのですが、結局最後の最後に心配になってしまい、ツマの実家に子供たちを預かって貰うことに。子供たちを預かって貰えるなら、もうちょっと若いときに行けたなぁ…とは思いましたが。

ルートは初心者向けの吉田ルート。とは言っても登山の類いであることは間違いありません。ハイキングとは違う、ということを後で実感することになります。

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近所の急な坂道や高尾山で装備の確認、大山でペースの確認とそれなりに準備は進めてきたつもりでしたが、こうして毎日通勤ルートから眺めている日本最高峰の山に挑戦するというのは不安が先に立ちます。「こんなの登れるのかよ」と。ひいひい言った大山の実質的に3倍の高さを登るわけですからね。

先日のブログでも書きましたが、初心者成功率50%とも言われているので、山小屋を予約した本8合目で引き返すのも充分アリだなと思っていました。

計画としては、吉田口5合目で1時間ほど身体を気圧に慣らした後、11:30に出発、7時間かけて18:30に本八合目の「富士山ホテル」に着く予定でした。通常は5時間、早い人で4時間未満らしいのですが、私は標準時間の1.5倍くらいかかるし、先日先に登頂された某女史もツアー参加で7時間だったとのことで、それくらいが目安になるのかなと。

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さて、TV等でお馴染みの観光地っぽいスタート地点で昼食(私が豚丼、ツマが牛丼)をとり、保全協力金1,000円/人を払って登山道に入ります。最初のうちはご覧の通りちょろいものです。こんな緩い斜面を1時間ほど歩くと六合目に着きます。

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六合目から7合目はやや傾斜がきつくなりますが、それでも日常の生活圏でもこれくらいの傾斜の坂は普通にあると思います。ただ距離が長いだけで(笑。

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七合目を過ぎると一気に登山っぽくなります。大山で似たような岩道を経験しておいて良かったです。が、その一方で私の準備不足が露呈したのがここで、火山石の特性を頭に叩き込んでいなかったんですね。道半ばまで来たところで、赤色の火山石がとても脆いことを知らずに、うっかそれを足がかりに石段を登ろうとしたところ、

「バキッ!」「ブリッ!」

という音を立てて左足を踏み外しました。ちょっとちょっと、いま、音が2回なったよな? 1つ目の音は岩が砕けた音、でも2つ目の音は明らかに自分の左足から出たよな? いやぁ切れた、何か切れたぞコレ。やっちまった…と、6合目の手前ですれ違った、グッタリとして馬で下山してきた親子の姿が頭をよぎりました。ああ、これはもう終了のお知らせ、残念だ。8合目に到達することなく、ここで馬のお世話になるなんて。いやでもまてよ、馬だってこんな岩場に来れないだろう? ここからどうやって馬が来られる場所まで行く?

にしても、悔しいなぁ…
こんなところで、文字通り足元をすくわれるなんて…

左足のふくらはぎはすぐに腫れ上がり、明らかに右のふくらはぎとは別の太さになっていました。しかも固くて熱を持っており、見るからに尋常ではありません。

が、恐る恐る左足を動かしてみると…動く。超痛いけど動く。やった、切れてないぞコレ。荷物から「フェイタス」(よく効く湿布)を取り出し、患部に貼り付けまくりました。足首を伸ばしたり縮めたりしなければ何とかなりそう。とりあえずこれで今日の宿まで行って、そこで考えよう。

にしても、「勇気ある撤退」ってなかなかできないものだなぁと思いました。

集団登山客の最後尾について、登って、でもペースが上がらないのですぐに置いていかれて、次の集団に飲み込まれそうになると待避スペースでやり過ごして…を繰り返します。

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振り返れば、結構えらい高さまで来ていました。ところどころ、「ここで目眩を起こしてフラついたら絶対落下して死ぬ」というところも何カ所もあり、やはり毎年たくさんの登山者が来ていても山登りは山登りなんだと言うことを実感させられます。

なお今回のお供にしたカメラはSONY RX100M3。当初絶対にEOS 5D4 + EF 16-35mm f/4L IS USMを持って行くつもりだったのですが、練習の過程で「荷物が1キロでも軽いことの重要性」と、「どうせ息が上がってしまってカメラを構える気にもなれない」ということを学び、RX100M3にしました。ちょっと砂埃には気を遣い、そういった場面では砂を噛むのを恐れてあまり撮影できませんでしたが、結果的には、主に重量の面で正解でした。まぁ1.5kgのカメラを持って行くなら、オマエが1.5kg減量すればいいじゃないか、というロジックも成立するような気もしますが…。

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他の登山客の「虹!」という声で振り返ると、下界から伸びる虹が。このあと通り雨に襲われてカッパを着る羽目になるのですが(もちろんRX100は使えません)このとき「カッパのズボンは登山靴を履いたまま履けるものでないと困る」ということを学びました。雨の降り出しはじめに急斜面の岩場で登山靴を脱ぐなど自殺行為です。もし脱いだ靴がコロコロと転がっていったら…。

たまたま雨がそれほど本降りにならなかったことと、近くにいたツアーのガイドさんが「カッパの上着だけでいいでしょう」と判断したのを信じて、上着だけでやり過ごしました。

ここから間もなく日も暮れ始め、やっとの思いで着いた八合目の山小屋の前で休憩していると、別の外人向けガイドさんが「Please prepare the headlight.」と指示しているのが聞こえました。私の宿は本八合目、八合目からさらに30分以上…標高で言えば330mほど登らねばなりません。そうか、ここで用意しておかないと見えなくなるのかと、ヘッドライトを装着して再出発。計画ではご来光を宿泊する本八合目の山小屋で見る予定だったのですべてが順調ならヘッドライトの出番はなかったはず。まさか出番が来るとは思いませんでした。

30分ほどの筈が1時間かかったと思います。暗いし、空気が薄くて呼吸しても体力回復しないし、左足は痛いし。ツアーガイドさんが「深呼吸して!深呼吸の数だけ前に進める!」と言っているのが聞こえ、それに習ってひたすら深呼吸しながら登ります。このとき、普通に深呼吸するより、笑顔で深呼吸した方が前に進めるような気がしたのですが、気のせいでしょうか。数名のグループが冗談を言いあって笑いながらスイスイ上がっていくのを見ると、笑顔のパワーってあるんじゃないかなぁと感じました。一人でニコニコしながら(;´Д`)ハァハァ言ってんの、暗闇でもなければ怪しすぎますけどね。

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本八合目の山小屋「富士山ホテル」に着きました。標高3,400mです。左足のケガもあり、11:30出発で19:30着ですから、8時間かかりました。

ここは「日本一標高の高いクレジットカードが利用可能な店」でもあり、宿泊代を払うと宿のルールの簡単な説明があり、夕食と翌朝の朝食が出てきます。名前はホテルですが、山小屋です。当たり前ですがお風呂なんかありません。宿泊客でもトイレは1回200円です(山小屋によっては宿泊客はトイレ何回でも200円のところもあると聞きました)。

七合目や八合目ではなく本八合目の山小屋を選んだのは、初日に少しでも標高を稼いでおきたいという思いからでした。結果的に正解だったのか、失敗だったのかは判断が難しいところです。まぁ終わってみれば悪くなかったと思います。

ツマに「明日、山頂に挑戦するか、ここで下山するかは、明日の体の様子で決めさせて欲しい」と話をしたところ、「ここで下山するのは残念すぎる」とやや不満げな様子。だよなぁ。気持ちは解るけど、山の下に停めてあるマイカーに乗って無事帰宅するまでが自分のミッションだからなぁ。救急車で運ばれちゃったらクルマどうするの。

夕食は富士山山小屋の定番、カレー。ウインナーとハンバーグと、お水が350ml付きます(下の写真の水は別途買ったもの)。翌朝の朝食はオニギリが一般的と聞いていたのですが、開けてみたら普通の白飯に漬物、牛しぐれ煮のレトルトパウチ、ふりかけ+おーいお茶200mlでした。意外とオニギリより悪くないかも知れません。

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夕食と一緒に渡された朝食には、ドコモの広告入りのマスクが付いていました。下山時は特にほこりっぽいために、マスクをどうぞという配慮でこれはこれで嬉しいのですが(まぁ自分でもマスクは持参しましたけど)、「ドコモのネットワークは富士山でもさらに速く快適に」というのは、繁忙期の富士山では大ウソだと思いました。五合目からここ本八合目まではネット回線はほぼ実用にならず、これ緊急電話(音声通話)通じるのか?と心配になるレベル。富士山のガイドブックにもしっかり「富士山では携帯電話のバッテリー消費が激しいので予備のバッテリーを」なんて普通に書いてあったりして、それ電波が届かなくてサーチ動作してるからじゃん!とツッコミたくなりました。

食事の後、寝床を案内されます。富士山の山小屋としては平均的なスペースだと思いますが、横方向には仕切りがなく、高さ方向も1m程度しかない空間に、10人ほどが押し込められます。隣の人との間隔は30~40cmくらいだったでしょうか。枕が奥なので頭から入って行きましたが、右足を痛めていたこともあり私の身体ではUターンできず、頭から出ることはできませんでした。布団は思ったほど臭くはありませんでしたが、寝室空間自体には独特の臭いはありました。1人分ですが、更衣室があったのは嬉しかったですね。

このとき時刻にして20:30くらいだったと思いますが、もう早い人は「山頂ご来光」に向けて1:00に起床するために備えて寝ているので、あまり荷物をひっくり返したり凝ったことはできません。汗をかいたシャツだけ着替えて、ボディシートで体を拭いて、左足の湿布を交換して、寝るだけです。靴は専用の袋に入れて寝床まで持って行く方式なので、間違えられる心配はほぼありませんでした。

八合目の宿の前で、ツアーガイドさんが「もし、明日起きて頭が痛かったら高山病ですから、山頂は諦めてください。山頂だけが富士山ではありません。辛い思いして辛い思い出だけでは残念すぎます。富士山にはまた来られるのですから」と言っていたのを思い出しました。どうか、明日起きたときに高山病にかかっていませんように。そして、左足の様子が少しでも改善していますように。ウッ、横になって筋肉の緊張が解放された瞬間に今度は右足が痙った!!くぅぅー!

痙った右足をなだめながら、21:00くらいからウトウトして、23:45頃に喉が渇いてロビーで「なっちゃんオレンジ500ml」を500円で1本購入、飲み干しました。ロビーではスタッフさんが4人ほど残務整理したり雑談したり。外に出てみるとベンチにはたくさんの登山客が座っていました。なに?徹夜登山組なの皆さん?

富士山の山小屋には夜は来ないんですねぇ。
後編に続きます。

  

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