すずめの戸締まり @IMAX 109シネマズ湘南

新海誠監督最新作「すすめの戸締まり」を観てきました。当初観に行く予定はなかったのですが、一部の方の評価がとても高かったので興味を惹かれ、座席状態を確認したところ、端っこ以外は満席に近い日曜の朝一のIMAXシアターの真ん中近くがポツンと1席だけ空いていたので、こんなベストポジションで見られるならと思い翻意したものです。

 

これは公式パンフレットではなく、全国先着300万名に配布される入場特典。今の観客ペースであればおそらく数日で配布は終わると思います。20ページのパンフレット的なもので、先日観た「ソードアートオンライン 冥き夕闇のスケルツォ」の公式パンフより全然こちらの無料特典の方がちゃんとしています。「冥き夕闇のスケルツォ」の公式パンフレットの中身スカスカぶりにはガッカリしましたので…。

ただ、この「新海誠本」(○○○本)というタイトルの付け方、これ明らかにコミケのノリなんですよね。いくらコミケが市民権を得たとしても、いまの新海誠映画の方がよほど客層が広い訳で、そういった層にコミケのノリ丸出しというのは…もうちょっとお化粧した方が良かったように思います。

さて、以下ネタバレを含みます。ここを読んでるかも知れない私の息子含めてこれから観る方は以下は読まないでください。

 

「君の名は」で国民映画としてのポストジブリ作品のポジションを獲得した新海誠作品ですが、「君の名は」「天気の子」に続いて今回も戦うべき相手は厄災です。もう異星人とか狂人を敵にしていたのでは観客の大量動員は望めないと言うことなのか、それともこれが新海誠ワールドなのかは分かりません。

ただ、この厄災の結果もたらされる「大地震」は、地震という現象こそ人々に認知されますが、原因である「みみず」は普通の人間には見えません。なお映像を注意深く観察すると「みみず」が見える状態の登場人物は目にピンク色のハイライトが入り、なにか人間として特殊なモードになっていることが分かります。

劇中ではスズメとソウタだけがこの「みみず」が見えるモードになるため、ほかのすべての登場人物にとってどのように大地震が避けられてきたかは知られていません。従って見ている方としての心境も「ああ、こうやって厄災が避けられてきたのか。大変だけどがんばってね」という「その他大勢」側になってしまい、スズメやソウタの苦労に感情移入できませんでした。監督は映画を見終わったときに「自分は生きていて良かったと思える」ことを目指したようですが、ちょっとその気持ちにはなれなかったですね。

今回写実的な描写でありながらロードムービーというスタイルをやってのけられましたが、九州、愛媛は現実とどれくらい一致しているか分からないのですが、東京〜堀切JCTあたりまではかなり現実の世界そのものでした。ですが東北になるとちょっと架空の地形になってますかね。東北道に入ったはずなのに大熊町や双葉町の国道6号のバリゲード街の描写があって(そっちに行くなら常磐道)、そして民家のバリゲードの向こうに小高い丘、そこから見える入り江というのは現実の風景ではちょっと思い当たらず、ここは架空の地形かなぁと。そもそもバリゲード街って放射線被害による帰宅困難地域のものであって、震災被害のものではないんですよね。

家の土台だけ残っている、すずめの実家は女川町から宮古市までのあたりのどこかなぁとは思いますが(あとで調べたら岩手県下閉伊郡山田町近辺だったらしいです)、なおさらバリゲード街から結構遠く、あなたのgoogle maps道案内はどうなてるんだよと。まぁ別段現実世界と一致させる必要はないのですが、なまじ東京が現実世界に近いだけに気にはなりました。

あと、この世界のすべての地震が「みみず」によって起こされる必要はない訳で、「みみず起因の地震」と「みみず以外の起因の地震」があるということにしておけば、あの「緊急地震速報っぽい音」は必ずしも劇中で流さなくても良かったはずなのになぁと思いました。「地震が起きたけど緊急地震速報が鳴らなかった」というのはそれはそれで超自然的な描写で良いのではないでしょうか。作中で繰り返される緊急地震速報、エンタメ作品としては悪趣味ですよね。

ラスト、当初結構離れて設置されていた2つの「要石」は最終的にそんな隣接してていいの?とか、なんで都合良くラスボスのみみずが2匹なの?とか、詰めが甘い印象は拭えませんでした。

冒頭に写真を掲載した冊子で監督が、これは震災文学の数ある作品のうちの1つだが、それをオリジナルアニメとして全国で大規模に公開される枠組みで作ったことに僕たちの仕事の価値がある…と言っちゃってますが、それはすなわち、描きたいものが先にある訳ではなく、新海誠ブランドを前面に出した、たくさんのスタッフが食べていくための手段を構築しました…と言ってるも同然で、それでは面白さは二の次になってしまいますよね。

ただ、全編にわたって流れはテンポ良くて、「眠くなる」とか「飽きる」というシーンがなかったのは素晴らしいと思います。退屈はしませんでした。

最近一人で映画を見に行くようになった息子がこの作品をとても楽しみにしているのですが、果たしてどういう感想を抱くのでしょうか。十代の感性だとまた違った印象なのかも知れません。少なくとも私はこの作品はBlu-rayは買わないと思います。

本編と関係ありませんが、IMAXレーザーは幕間のCMが少ない代わりに、IMAXレーザー自体のCMが3回も入るのは辟易しますね。

 

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