1939年に発表された小説「Johnny Got His Gun」(ダルトン・トランポ)の1971年の映画化。日本公開は1973年。「Johnny Got His Gun」は第一次世界大戦時の志願兵募集の宣伝文句である「Johnny Get Your Gun」に対するアンサーのつもりで付けたらしく、原作者としてはコテコテの反戦映画のつもりで書いたのだろうと思います。銃を取った結果、こうなりましたよ、と。
1年か2年前にどこかでテレビ放映され、その時にチラ見したのですが、「うわぁ…」と思ってずっとそのままだったのですが、改めて見直したくなってきました。配信や有料含めて放送予定を確認したのですが見当たらず、ふとパッケージメディアを確認するとDVD版が配信レンタル2本分程度の価格で販売されているのを見つけ、いっそこれかと思い購入しました。
さて改めて見直した結果…やっぱり「うわぁ…」でした。戦争で顔面と両手両足を失った青年が、軍の実験と称して死ぬこともできず苦しむというストーリー。脳は生きており意識はあるものの触覚以外の感覚は失っており、今日が何月何日かもわからないし知る術もない。鎮静剤を定期的に投与され夢うつつとなり、いまが現実なのか夢なのかの境界もなくなっていきます。
反戦映画かと言われるとちょっと違うような気もしますが、戦争シーンやグロシーンがほとんどない状態で反戦映画を描こうとした手法に感服します。ただこの映画が作られた1970年前後と比べると、日本などにおいてはむしろ戦争でこうなるというより、妙に医療技術が発展してしまったがために戦争に行かずして誰でもこうなる可能性があるという点で、その辺のホラーよりよほど怖いです。
先日身近な人がALS闘病の末に亡くなったのですが、この映画で真っ先に思い出すのはまさにその件でした。ALSで目や口を含め体の一切が動かせないのに、残った視覚と聴覚から入る情報で嬉し涙を流していたりするのを見ていたので、この映画の主人公が置かれた立場に近いものを感じます。人間としての尊厳を保ったまま死ぬってどういうことなんだろう…と考えさせられます。
先日入院したときも、同室の患者の世話をする日本人の若い看護師が、中国人の中堅の看護師に対して、「中国とか他のアジアの国って健康寿命と生命としての寿命ってあまり差がないじゃないですか。大きく差があるのは日本だけじゃないですか。それが本当にいいことなのかは分からないですよね」と憚らずに普通の声量で言い放っていてよく聞こえてしまったのですが、それは確かにそうだが、医療関係者でもそう思ってる人はいるのかと軽く衝撃を受けました。もっとも、この映画で描いているのはそういうことですし、本編で最後にあてがわれた、主人公の息の根を止めようとする女性看護師もそういう考えの持ち主でしたしね。
一度見たらもう10年…いや、一生見たくない映画だと思いますが、誰もが一度は見ておいても損はない、という意見には同意します。
コメント