「いやいやえん」と「おひさまはらっぱ」

宮崎駿氏がこの本を読んで絵本界に行くのをやめたという問題作(笑)「いやいやえん」が良いというのでだいぶ前に買ってみました。

ほとんど文字だし、挿絵はあっても白黒だし、幼稚園児や小学校低学年には自分で読むには敷居が高いと思います。しかし読み聞かせをするとこれがよくできていて、子供がじっと聞き入ってくれます。初版は1962年(!)とのことで、親が懐かしさで手に取る場合もあるようです。

相似形の繰り返しのような語り口が独特で、正直、読み聞かせする方にとってはダルい面があるのは否めませんが、子供にとってはこの繰り返しが、深い状況把握と、未来予測性を育んでいるのだと思います。

主人公は暴れん坊&きかんぼうの「しげる」で、彼を中心とした夢のような現実のような世界が描かれますが、単におとぎの世界ではなく、しげるのエゴやワガママが前面に出るところに妙なリアリティがあります。

彼を取り巻く大人たちのレスポンスは、子供に対して近視的になりがちな今の若いパパ・ママにとっては子育てのヒントになるかも知れません。

46年前に書かれたにもかかわらず全く古さを感じさせない良書。中毒性(笑)が違います。ベストセラーは伊達ではないと思いました。

なお、同作家陣による「おひさまはらっぱ」は、「いやいやえん」と世界観を共有しており、「しげる」ほど悪ガキ(笑)ではない「ゆうじ」が主人公。より多種多様な「おひさまはらっぱ」を中心とした世界が描かれます。

こちらは初版が1977年で、当時は今ほど「はらっぱ」の存在がファンタジーではなかったかも知れません。

「いやいやえん」と同じ短編集で、1話を読み聞かせるのに概ね10~15分。子供が布団に入って昼間のテンションを下げるのにちょうどいい時間です。「いやいやえん」よりはやや、やさしい雰囲気の内容ですが、夢のような現のような世界である点は一緒です。

個人的には「おひさまはらっぱ」の「くまのたんじょうび」が、幼稚園生活が終盤にさしかかって、ようやく友達との距離感がつかめてきたムスメの姿と重なって、泣けました。–自分の誕生日に大きなケーキを焼いた子ぐまですが、ケーキを食べに来てくれる友達がいません。そこで一案を講じる子ぐまですが、事態は予想外の展開に–というお話です。

また、「三つ子のこぶた」の朝食シーンは、「ラピュタ」の「目玉焼き乗せトースト」(通称:ラピュタパン)や、「きょうのおはなしなあに -Good night stories- 春」に収録された「チブがお日さまにもらったもの」に勝るとも劣らない破壊力がありました。
(空腹を誘うという意味で。)

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