コニカミノルタを手中に収めたとは言え、キヤノン/ニコンとのゲームチェンジを目指すためにカメラからメカを廃することに熱心だったソニーから、一つの到達点となるカメラ「α9 III」が出ました。民生用のレンズ交換式デジタルカメラとして初の「グローバルシャッター方式」のCMOSイメージセンサーを搭載し、シャッターメカを必要とせずにローリングシャッター歪みのない写真が撮れるというものです。
グローバルシャッター方式自体は昔からあるもので、CCD時代にはまさにグローバルシャッター方式だったわけですが、撮像素子がCMOSになってからというもののグローバルシャッター方式は製造・性能の両面で課題山積とされ、長年実用化されてきませんでした。一部産業用としては実用化されていましたが、画質向上が著しい静止画カメラ用としては採用できなかったのでしょう。
これにより、SIGMA以外のほぼすべてのミラーレスカメラに付いているシャッター幕を廃することができ、よりニコンとキヤノンの長年の量産経験に基づくアドバンテージを崩すことに成功したわけです。
現状ではISO下限が250スタートなど、今までのカメラに劣っている部分はあります。ですが、それを補って有り余るどころか、お釣りをばら撒くようなメリットがあるのが本機のウリ。カタログに並ぶ数字は「桁を間違ってんじゃないの?」というようなスペックばかりです。今まで撮れなかった写真や、より劇的な1カットが撮れる可能性が高まります。この技術はいずれ同社の他モデルにも展開されることは間違いなく、カメラの概念を覆すでしょう。
ただこれはまた、日本のビデオカメラが崩落してきた道と同じ道でもあります。先行メーカーのアドバンテージを崩すべくメカを廃する努力をした結果、ビデオカメラという単独の高額商品自体が不要となり、スマホの一部機能として飲み込まれてしまいました。それでも進む道はこちらなのだと覚悟を決めたソニーに、他メーカーもユーザーも無関係ではいられません。
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