Vガンダム (1993年)

手術後は病院で、バンダイチャンネルに加入して1993~1994年に放映された「Vガンダム」を観ていました。ガンダムF91の商業的な失敗の後、富野監督がガンダムというコンテンツを終わらせるつもりで鬱になりながら作ったという本作。とにかく凄惨なシーンが多く子供には勧められないもので、こりゃあ現代では「水星の魔女」とか「GQuuuuuuX」みたいな路線になるよなぁ…と納得してしまいます。

Vガンダムは4話くらいで脱落してしまって、その後は断片的にしか観ていなかったため中後半はどうなったのか覚えていなかったのですが、今回全話視聴とは行かなくても飛ばし飛ばしで半分くらいは視聴したので、話を概ね把握することができました。

「女」「妊娠」「赤子」が大きな意味を持ち、「大人が正常に見えてどこか狂気がある」「多くの一般人が宇宙に放り出される」「最後に巨大人工構造物が出てくる」というところは多くの富野作品に共通のモチーフですが、それは本作でも踏襲されています。ただ本作の狂気は「ギロチン」「戦艦がタイヤを履いている」「MSを倒すときは基本的にコクピットをピンポイントで破壊する」「宇宙漂流の刑」「宇宙空間でタイヤを使う」「お母さんの生首を子供が持ち上げる」「ビキニ女戦士軍団」「敵のエースパイロットであり主人公の幼馴染の叔父に当たるイケメンが最後は巨大人工構造物に頭を強打して死ぬ」など色々ぶっ飛んでいて、後年、富野監督が「この作品は見てはいけません」と言ったのも納得です。少なくともガンダムというコンテンツに対してポジティブな作用はないでしょうね。

これで燃え尽きた富野監督がガンダムから身を引いた結果生まれたのが「Gガンダム」で、これが現代に続くガンダムコンテンツの発展の決定打になったのは多くのガンダムファンが知るところでしょう。「宇宙世紀」と整合性をとらない、いわゆる「オルタナティブシリーズ」の誕生です。

いっぽう富野監督はその後「ブレンパワード」を経て「ターンエーガンダム」「Gのレコンギスタ」と、一転してあまり人が死なない、生きることの素晴らしさを語りかけるような作品に傾倒するようになります。

Vガンダム制作の頃に富野監督がイラついていたのは、どうも元々、ジブリの宮崎駿氏に対する「憧れ」「嫉妬」「尊敬」「コンプレックス」が混ざり合った感情を持っていたことと、あちらは作品自体で数百億のコンテンツになっているのに対して、ガンダムはコンテンツ自体はその1/10規模の売り上げにとどまっており、あくまで「玩具を売るためのカタログ映像」でしかなかったこと、さらには当時サンライズがバンダイに買収されるにあたって、評価額を上げるためにVガンダムを作らせていたことを富野監督自身が知らなかったなどの要因が重なったためのようでした。結果、鬱になり、Vガンダムのあのような作風に繋がったわけです。

外野から見れば「だってガンダムビジネスってそういう設計なんだろう?」とは思いますが、当の富野監督は「作家性」で勝負したかったようなんですね。でも結果的にIP全体の売り上げで言えばジブリ作品よりガンダムシリーズの方が数倍大きくなっていますので、それで年齢のこともあって監督も腹落ちしたのでしょう。これでいいんだと。なのでガンダムコンテンツに対しての最近の発言はかなり穏やかですよね。

それで話はVガンダムに戻りますが、シリーズを通して一番心に残ったのは敵の猛者であるワタリー・ギラ(声:立木文彦=碇ゲンドウ)のこのセリフ:

お前が白いモビルスーツのパイロットだというのか…!
こんな現実が…!こんな現実があるというのか…!
まだ遊びたい盛りの子供が…
こんなところで、こんなことをしちゃいかん!
子供が…戦争をするもんじゃない…!
こんな事をしていると…みんなおかしくなってしまう…
そうなる前にモビルスーツを降りた方がいい…
現実が…こんなに残酷とは…
離れろ!私から離れろ!!早く!行け!
まったく…(自爆)

これXで「子供が戦争をするもんじゃない」で検索すると動画が見られるのでぜひ見ていただきたいのですが、震えますよね。富野監督の心の声がもろに出ている気がします。このVガンダムでの立木文彦氏の演技が庵野秀明氏に愛され、「エヴァ」での起用になったとも聞きます。

幼馴染の女の子(シャクティ)が実は敵の女王の娘でサイキッカーだとか、主人公の憧れの年上の女性(カテジナさん)が途中から狂気を纏って敵として立ちはだかるとか、敵の最終目的は脳波攻撃で戦闘意欲を失わせることだったのにパワーが強すぎたのか地球の人々が幼児退行してしまうとか、話の大筋はかなり面白いのですが、いかんせん作品全体を覆っている鬱っぽい空気が独特ですね。キャラクターが温和な感じのデザインだけに余計そう感じますね。

こういう作風を経て、世間の評価も受けて、結果、いまの「水星の魔女」や「GQuuuuuuX」のような、やってることの表面上はエグくてもベースはどこかポップで明るい、真の暗部がない作品に繋がってるんだなぁと理解が深まりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました