光回線 定額制は限界か?の件

少し前の話題ですが、こんなのがありました:
「遅くて使いものにならない」という光回線への声、定額制も限界か

「あまり話題になっていないが」で始まるこの記事、話題になっていないのであれば杞憂なのでは?という思いもなくはないですが、それでもネット上でかなりのハレーションを起こしたように見えるのは、思った以上にこの問題に遭遇した人が多いことを示しているのではないでしょうか。

私も休日の夕方とか、ネットの重さに辟易します。(もっとも私は休日はメシ係なので、夕方にネットをしていることはほとんどないんですけどね!)

「現在のインターネットは無駄なトラフィックであふれている。」

この言葉に反応した方も見受けられましたね。「無駄なトラフィック」って人が決められるものではないと。でも「固定回線のネットはデータ流し放題」という前提に立ったコンテンツって結構多くて、SNSや広告やニュースサイトで頼んでもいないのに勝手に再生される動画などは私にとっては「無駄なトラフィック」って感じがします。

昔デジタル家電に携わっていた頃、録画用のHDDレコーダーって無駄だなぁと思っていました。これは放送局にあるHDDに収められた映像コンテンツを、電波を使って転送して、家庭用のHDDレコーダー内にデータを複製する仕組みな訳です。でも電波って一定時間に流せるデータ量って限られているから、このコンテンツを送信するのはこの時間、と時間を区切る訳です。その一覧が書かれた物を俗に「テレビ番組表」と呼ぶわけですが、スカイツリーみたいな巨大構造物を建てて、デジタルデータをコピーさせるのって考えてみれば結構壮大な仕組みですよね。

その一方で、この仕組みで流せるようなデータ量って(真面目に計算したことはありませんが)絶対にネットでは流し切れなくて、その気になれば全国のすべてのHDDレコーダーに一挙にデータのコピーを作れるわけで、放送という仕組みはある意味凄いものではあると思うのです。まぁネットでも「ブロードキャスト」というデータ送信の仕組みはありますけど、それは電波を使った放送と同じように一方的なもので、「利用者側からVOD(ビデオオンデマンド)のように任意の番組データを要求できない」わけです。(まぁ昔ネットが遅かった頃はネット側でリクエストして大量のデータを人工衛星経由で送ってもらうなんてのもありましたけど、帯域の問題からか本格復旧の前に消えましたね。)

そう、そのVODという概念が世に出た頃、それはそれでクレイジーな思想だなと思ったものです。個人が好きな番組を見るためにフルハイビジョン(2K)映像なら6~10Mbpsとかいう帯域を使うわけですが、これを国民皆が使い出したら、ネットのトラフィックって一体どうなるのかと目眩がしました。たかがテレビ番組を見るだけのために、ネットにそんな大量のデータを流すのってアリなの?と。

でもそれを否定した場合、次に考えられる社会インフラ(というか、退行先)としては「レンタルビデオ店」や「パッケージメディアの購入」と言うことになるわけですが、これは映像のデジタルデータをガソリンや電気で走る輸送手段で運ぶものです(自転車や徒歩かも知れませんが)。ネットの帯域の狭さを物理的な移動手段で補うわけですね。

もうすっかりレンタルビデオ店やパッケージメディアの店は一時期の勢いはなくなってしまいましたが、ネットの帯域が本当に悲鳴を上げるとなるとこういった物理的移動手段でネットの帯域を補ってあげる必要が出てくるのではないでしょうか。

では問題は「誰がデータの物理的移動手段に移行する(退行する)か」ということになるわけですが、これはもう資本主義ですから、今後値上げされるであろう「光回線の料金」に耐えきれなくなった人がそれに戻るしかないんでしょうね。つまり今までビデオ配信で見ていたものが、TSUTAYAに後戻りするわけです。

映像ならこんな感じですけど、他のデータも同様でしょうね。新しいOSやソフトウエアが出たときに店頭にパッケージメディアを買いに行く行為により、ネットの帯域を補わざるを得ません。MacOS Xの新しいバージョンが出る度に電気屋の前に並んだのが懐かしいです。

いつの間にかVODサービスが普通になってしまったので、昔抱いていた「皆が映像コンテンツをネットに頼るようになったら帯域問題はどうなるのか」という気持ちはどっかに忘れてきてしまっていましたが、冒頭の日経の記事を読んで、ああやっぱり進化の方向としてやりすぎたか、と冷や水を浴びせられた気分です。

世界的にはどういう動向なのか不明ですが、固定回線が従量制となると、Apple の iCloudなんかも戦略の見直しが必要でしょうね。iCloudバックアップとか、デスクトップの同期とかとてもじゃないけど気軽に使えません。もっとも、通信業者に言わせれば200GBで200円、1TBで1,200円などと従量制にしているiCloudは「お前らだけずるい」と言う気持ちはあるでしょうね。「タダ乗り」という批判があるのもごもっともです。

さて実際従量制になったらいかほどですかね。今の値段キープなら、月間1TBくらいでしょうか。+1TB/月で+3,000円くらいとか。いまでもプロバイダーによってはP2P通信の遮断とかはしているはずですが、一部のヘヴィユーザーを抑え込むだけでもずいぶん違うと思うんですが。甘いですかね。

IPv6トンネル方式にしたっていまそのユーザーが少ないから優位なだけであって、長期的な根本解決ではありませんしね。


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