半年使いましたので、インプレッションを纏めておきます。
EOS 5D Mark IIは一つの到達点となる画質でしたが、5D Mark IIIが出たとき「1枚薄い膜をはがしたような、クリアな画質になった」と感じました。その後5D Mark IVではクリアさと言うよりは繊細さを手に入れましたが、今度のEOS RではEOS 5D Mark IV並の画質に、さらにAEが好ましい方向に動作するように感じました。それは大人びた画質と言いましょうか、「見た目以上に鮮やか」だったのが若干抑制され、画像のダイナミックレンジの使い方が巧みになりました。画像処理エンジンが「DiGiC 6+」から「DiGiC 8」に変わっているので同等のセンサーでも画質が上がっていても不思議ではありません。
キヤノンは新マウント=「RFマウント」で今までなし得なかったレンズ設計が可能になるとしており、他社が軒並み「ミラーレスだから小型軽量」を主張する中、「ミラーレスだから高画質」を全面に打ち出したのは慧眼と言うほかありません。しかもそれが口先だけのセールストークではなく、実際にEOS Rと同時リリースされたRFレンズはいずれも高性能でキヤノンの主張を裏付けるものでした。しかしEOS Rではカメラ内DLO(デジタルレンズオプティマイザー)がストレスなく使えるようになっており、従来のEFレンズでも性能向上が見込めるのです。
従来のEFレンズを使ってもより高画質。RFレンズを使えばさらに次の次元へ…。これはRFレンズまで手が出なくても本体だけでも買う価値があります。そして追加資金ができたら、RFレンズを購入して二度楽しめるのです。
しかしここまで持ち上げておきながら、そこはやはりミラーレス。EOS 5D系の完全な代役になるかと言われればノーです。5D系より優れている点、劣っている点、多々あります。
先に5D系より劣っている点から挙げます。
バッテリーの減りについて。やはり早いです。さらに内蔵Wi-Fi機能もパソコンにスマホに便利に転送できますがバッテリー大食らいです。今までの1.5~2倍はバッテリーを用意した方が良いでしょう。但しスリープ時の電力消費は意外なほど抑えられており、ウッカリ電源を切り忘れると次に使うときにバッテリーがカラということはあまりありません。
次に動体に対するAF。これはミラー付きのEOSには適いません。運動会を撮るお父さんは従来型のEOSを買い換えるのではなく、買い増しした方が幸せなはずです。そしてお子さんが卒業したら従来型のEOSを手放せば良いでしょう。電子ビューファインダーの遅延はごく僅かですが、やはりフレームいっぱいに動体を追う場合には不利です。静物でも凹凸の少ない面への合焦は5D系より苦手ですね。
そしてローリングシャッター歪み。EOS Rにはほぼ無音で撮影できるサイレント撮影機能がありますが、これは電子シャッターを使用するもので、従来のようにメカをそっと動かしてサイレント化する仕組みがありません。つまりサイレントモードをONしたときには、必ずローリングシャッター歪みに気を配る必要があります。望遠レンズの手ブレですら歪みになりますので、特性を理解して使う必要があります。
以上のような点は、ミラーレスカメラであればある程度予想が付くものです。裏を返すと、ミラーレスという方式に起因する上記のような欠点以外は、欠点が見あたりません。
次に5D系より優れている点。
冒頭にも書きましたが、画質が良いです。さらに安定感を増した、安心のキヤノン画質。
EOS R + EF 17-40mm f/4L IS USM
そして科学的ではないのですが、使っていて楽しいです。理由を挙げてみると、動作が軽快であること、従来のEOSからの乗り換えの違和感が少ないこと、あまり小さくなっていないとはいえそれなりには小型軽量になっていること、しかしながら使いにくいほど小さくはなっておらず、しかもボディの剛性感は失われていないこと、デザインフォルムが新鮮味があること、ファインダーの出来が意外と良いこと、Wi-Fiの安定度が高いこと、特にBluetoothとWi-Fiの連携で、外出先でカメラ内の写真を簡単にスマホに取り出せること…あたりでしょうか。子供の運動会が終わってしまった私の使い方では、5D Mark IVから乗り換えて「残念だなぁ」と思うことがないのです。
そう、ファインダーの出来はなかなか良くて、キヤノンのカメラの主力がミラーレスになったらEVFに付き合わないといけないんだよねぇ…と心配していたのですが、その心配が分かっていたかのような作り込みの入念さ。光学ファインダー(OVF)ではできなかったような情報重畳表示(特に水準器表示)が嬉しいです。
先にAFが欠点と書きましたが優れている面もあって、肉眼では見えないようなEV-6の暗い被写体に対しても合焦させることができます。
パソコンへのWi-Fi転送もとても安定していて、Macで複数ユーザーを使っている環境でも誤動作が一切ありません。今まで使ってきた様々なカメラのWi-Fi転送手段で、ここまで簡便かつ安定しているものを見たことがありません。
RFマウントとして用意された便利ズーム、RF 24-105mm f4L IS USMがまたいい。画質面で初めて満足できる24-105mmに出会いました。測距窓がないのが使いにくいときがありますが、MFに切り替えると液晶/ファインダー内に距離表示が出るのでそれで代用せよということなのでしょう。(この距離表示がフォーカスリングを回すのと逆方向に動く感覚なのが不思議です。今までは「針固定」だったのに対して今回は「目盛り固定」なので感覚が逆になってしまったのですが…。)
以上が5D系と比べて優れていると感じた点です。
コントロールリングは慣れるといい感じの装備です。露出補正に割り当てていますが、本体の露出補正ダイヤルと違ってAE動作後でないとコントロールリングによる露出補正は有効にならないのには少し戸惑います。とはいえ、常時作動するようにすると簡単に露出設定が変わってしまい使いにくいのかも知れません。EFレンズ用のマウントアダプターは一番シンプルな物を買いましたが、コントロールリング付きの物が欲しくなってきました。
一方でファインダー右側の一等地にある「タッチバー」は野心的な挑戦でしたが、実は全く使わなくなりました。操作感がないのがどうも使いにくく、動画撮影中に無音でパラメーター調整しなければならない場合などに重宝するのでしょうが、私の使い方ではそういったケースも少なく、持てあましています。
バリアングル液晶は5D系ではかたくなに装備されなかったもの。おそらくキヤノンが5D系に求めている堅牢性を確保するためには付けられなかったのでしょうが、やはり便利な物は便利。重宝しています。
ファインダーを覗いた瞬間に、フォーカスポイントが右端または右上端に飛ぶ場合があります。原因を探ったのですが、右端に飛ぶのは深く握った際に親指の付け根の掌あたりで右ボタンを押し込んでることがあるためでした。右上に飛ぶのは原因が分かっていないのですが、まぁ無意識のうちに液晶画面を触ってるんでしょう。
肩のストラップ金具はあまり例を見ないソリッドな形状。なおEOS RPでは通常のカメラっぽい金具になっているので、いまのところこの意匠はR専用です。初物の工業製品によく見られる、力が入った設計であると感じます。
満を期して登場したキヤノンのフルサイズミラーレスは、EOSとして想像以上に違和感がなく、上位モデルに共通のいいもの感に溢れていました。個人的に先行して使っていたソニーNEX/αもミラーレスでしたが、使い慣れたEOSがそのままミラーレス化したからこそ、得られる新鮮さがあります。
■以下撮影サンプル
EOS R + RF 24-105mm f/4L IS USM
水田の苗の細やかな描写は「便利ズーム」の概念を覆す。
EOS R + EF 35mm f/2 IS USM
大口径単焦点の立体感
EOS R + RF 24-105mm f/4L IS USM
EOS R + RF 24-105mm f/4L IS USM
箱根への移住を推進するガイドブック。
EOS R + RF 24-105mm f/4L IS USM
EOS R + RF 24-105mm f/4L IS USM
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