110万円の版画(その2)

先週見た110万円の版画、もうちょっとまじまじと見ておけば良かったなぁ…と若干後悔したので、今週は別の会場でやっているようなので見てきました。まぁ今回は110万円のは展示してなかったんですけど、30〜70万円くらい。

ところでこれ全部同一会場、ほぼ同じ日程なんですが…(笑。

 

 

空いていそうな時間帯を狙って行ったので、絶対販売員に捕まるだろうなとは覚悟していましたが、案の定捕まりました(笑。でもどんなセールストークを繰り広げるのか興味深かったので、話を聞いてみました。青文字はクマデジの心の声です。

販売員:お目当ての作家さんはいらっしゃいますか?
クマ :
前回は深崎暮人先生目当てで来たんですが、実は会場で見たAnmi先生の作品がけっこう気に入りました。

実はこれを機にAnmi先生のtwitterアカウントをフォローさせて頂いたのですが、私のフォロワーの中に先着2名がいたのには笑ってしまいました。さすがです(笑


販売員:そうなんですか!それは嬉しいです。Anmi先生は学校で指導もされる方なんですよ。
クマ :ええ、調べさせて頂きました。たぶん心に引っかかったポイントは色使いだと思うんですけど、あえて色数を限定する技法らしいですね。塗る前に使う色を予め決めておくとか。
販売員:よく調べられていますね。
クマ :しかし一番驚いたのは、Anmi先生は韓国人だったと言うことですね。だってこれ、どう見たって日本人が描いたような絵柄じゃないですか。コロナ禍になってからはもっぱら韓国で商売されているようですし。
販売員:ええ、Anmi先生は今は韓国在住ですね。
クマ :でも日本語ペラペラだし、子供の頃から日本の文化を吸って成長したらこういう絵を描くようになるのかなぁ…と思いました。韓国って反日のイメージが形成されていたりするじゃないですか。彼女がここまで日本人らしいことに驚いています。

Anmi先生は留学で来日したその年にイラストの仕事を請け負っているので、留学に来た時点で既に日本風の絵柄は完成していたものと思われます。

販売員:作品は高いと思われますか?
クマ :いや、ネットで製造工程を見させて貰いましたが、あれを踏まえれば高くはないと思います。あのような工程で、このような販売方法をしていたら、これくらいの価格になるのは分かります。

販売員:価値を認めて頂いてありがとうございます。クルマにお金をかける方がおられるのと同じようなものだと思っています。とはいえ、高いので簡単に買えるものでもないと思いますが、タダなら持って帰りたいですか?

何だその質問。

クマ :タダとは言いません、価格1/10なら買ってもいいと思います。この価格の横の「40」という数字は、40点複製が存在します、という意味ですか?
販売員:仰る通りです。ただ、今時点で作品が存在しているわけではなく、受注生産なので、最大40点製作しますという意味です。納期は2ヶ月くらいかかるのですが、実はお客様にお届けする作品も全て作家の先生がチェックされるので、そこでダメ出しされると納期が延びることもあります。ただ、お客様にその旨ご説明すると、「先生がそこまで気合いを入れてくれた作品」ということで逆に喜ばれることもありますけどね(笑
クマ :それ、よく分かります(笑

販売員:これらの作品の寿命はどれくらいだと思われますか?
クマ :10年くらいですか?
販売員:一生ものです。
クマ :いや、マテリアルとしてはそうなのかも知れませんが、描いてある絵柄が10年後に価値を持つかは分かりませんよね。流行り廃りがあるので。
販売員:ビンテージ的な価値を持つかどうか、というところですね。

実際、メルカリでもなかなかセカンドハンドの取引は成立していないようです。(→参考リンク)

販売員:ところで今日は、これらの版画の楽しみ方をぜひ知ってから帰って頂きたいと思います。いま部屋の明かりだとこう見えますが、(別途用意したLEDスポットライトを当てながら)こうやって見るとまた違った色に見えますよね。どうぞご自由に試してみてください。

これが一番知りたかった部分ですね。これらの版画購入者もそうやって鑑賞されている方もいらっしゃるようなのですが、鑑賞させて貰ったところ、光の当て方で違って見える理由は4つあると感じました。

(1)版画のベースのメタル素材、および、メタル素材の表面加工による光の乱反射、あるいは光の干渉現象によるもの
(2)ラメ塗料によるもの
(3)作品の凹凸に起因するもの
(4)光源のスペクトラム(演色性)によるもの

ここで(1)〜(3)はもう見れば分かりますが、(4)は原理を知らない人には不思議に見えるでしょうねぇ。スーパーの精肉コーナーで肉が実際より鮮やかに見えるのと同じ理屈です。

販売員:部屋に太陽光が差し込むと思いますが、ぜひ太陽光が当たるところに飾って頂きたいです。とても良い色が出ます。

まぁ太陽光の演色性はなかなかですしね!

クマ :でも太陽光に当たると褪色するじゃないですか。
販売員:大丈夫です。
クマ :ちょっと信じられないですね。耐褪色性と発色性は両立しないので…。ところで、この商売は10年くらい続けておられるのですか?
販売員:40年ほどになります。
クマ :でしたら、40年前の版画も一緒に証拠として置いてくれればいいのにと思います。ほらみてください、褪色していませんって。
販売員:なるほど…。この表面に貼ってあるアクリル板が紫外線を99%カットしますので。
クマ :可視光線も褪色の原因になります。

プリンタメーカーみたいに加速試験した結果でも見せてくれれば信用できますけどね…。

販売員:ご自分のお部屋にこういった版画を飾ってみたいですか?
クマ :自分はモノ作り系気質なので、飾りたいと言うよりは描けるようになりたいですね。

まぁ描けるようになりたいというのは、いわゆる「おじさんの進化図」系のこじらせる話だとは思いますけどね。

 

 

他にもいろいろ話し込みましたが、肝心な部分は上記のようなところです。以上から、私なり結論を出しました。

1.この版画の「光によって見え方が変わる」という売り方は、メタルやラメなどそれ自体が光を反射するものを除けば、光源による演色性の違いを用いている可能性が高い。(高価なものの中にはエッチングパーツ?等を幾重にも取り付けて立体感を出しているものもある。)

2.会場を借り切ったり、スタッフを常駐させたりなどコストのかかる売り方をしているので、中心となるマテリアル以外の部分にかなりのコストがかかっている。一連の「商談をして、1対1で十分説明を受けて、納得して買う」「版画職人のハンドメイド」「作家による全数チェックによるクオリティ担保」「直筆サイン入り」「限定数量」「作家さんがこの絵を描くまでに費やした工数」ということまでに価値を見いだせるかどうか。

3.個人の趣味嗜好はばらけるので、リセールバリューには期待できない(そもそも売買が成立しない)と考えた方が良い。あれば儲けもの、というくらい。

 

まぁ高価で取引されている版画を穴が開くほど眺めて、この版画が表情を変える原理を理解したので、自分としては満足しました。光によってこれくらいの表情の変化を出せる印刷物の工業製品化は可能だと思いますが、まぁそうしてしまうとそれはそれで価値がなくなる(個人の趣味嗜好のばらけ具合と製作コストが損益分岐点に乗らなくなったり、貴金属のようにお金を積むこと自体が価値になっている面がある)んだろうなぁ。

そういえば目の前で「灰色の女の子」を契約している方がいましたね…幾らなんだそれ…メタル版画だから高いぞそれ。

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