神々の山嶺(いただき)@チネチッタ

アニメは日本が最高峰…と思っていましたし、実際この映画の絵柄を見ても海外アニメ特有の微妙感が漂っていたので見るのを悩んでいましたが、主人公・羽生の声が「松ぼっくり」大塚明夫氏と聞いたら行かざるを得ません。神奈川県では川崎、横浜、相模原(橋本)の3箇所での上映、しかも横浜では1週遅れということで、ちょうど用事があったので川崎で観てきました。

結論から言うと、思いのほかいい映画でした。「作・夢枕獏 画・谷口ジロー」とはいえ、このキャラのどこが谷口ジローやねん!とツッコミたくもなります。しかし谷口ジロー氏の画力があったからフランス人の心を動かし、アニメ映画にまで至ったのだろうと思います。キャラはともかく、日本の風景の濃密さはまさに谷口ジロー譲り。しかも1980年代の空気感が、「クライマーズ・ハイ」(そういえばこれも山の映画だ)で描かれたものと地続き感があります。かたやアニメ、かたや実写なのに。

良かった点は大きく2つ。1つはこの日本人には見慣れないフランス風に解釈した谷口ジローの絵柄が、大画面で観るととても写実的でありフィットしたこと。「君の名は」に代表される最近の美麗アニメ背景とはまた違うのですが、これはこれで現実と見まがう出来なんですよ。氷一面、空一面、雲の上の世界…臨場感と緊張感たっぷりの背景です。

そして2つ目は音楽のセンス。これまたカッコイイんだな。ちょっとサントラ欲しくなりましたが出なさそう(笑。

逆に「いやいや」と思ったのも2つ。1つはカメラマン深町が最初にカメラを三脚にセットするシーンで、クイックリリースプレートが三脚側にあるのにワンタッチで取り付いてしまうこと(笑、それと現金書留をポストに投函することです(届かない気がする…)。

 

ストーリーは概ね原作を踏襲していますが、尺に収めるために主に山のシーンを中心として再構成、ネパールの街や人間の描写、カメラマン深町に関する描写は大幅にカットされています。あとは決定的な「現像結果」のカットが出てきません。それは映画版では本質ではないと言うことでしょうか。

しかし映画で再び羽生の人生を反芻して思うのは、こうやって山に取り憑かれてしまうと人生の幕引きはああなるしかないよな、あれはあれで幸せな人生だろう…ということです。ある意味、本望じゃないですか。実際のエヴェレスト山頂付近はとても放送できないようなものがあったりしますが、アニメですから描写できるわけです。あれはあれでアリだと思います。

 

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