稲村ジェーン

最近高2の息子がどこで聞いたのか、サザンの「希望の轍(わだち)」がいい曲だよね、と言い出しまして。調べてみると鉄分強めの息子のことですから、JR茅ヶ崎駅の発車メロディーで知ったのかなと思いました。

これはシングル化されていないにもかかわらず知る人の多い名曲ですが、息子に言われたことをきっかけにこの曲を生んだ映画「稲村ジェーン」を思い出しました。ずっと観たいとは思っていましたが、観る手段がなかった映画です。

しかし2021年にBlu-ray & DVD化されていることを知りまして、だいぶ出遅れ感はありましたが、ヨドバシアキバ並びにドットコムにはミゼット付きの限定版(しかもAmazonの通常版と1割程度しか違わない価格(;´Д`))が残っていたので購入、「暑かったけど、短かったよね、夏」などという感慨を抱く前の夏の初めにようやく鑑賞できました。

30年越しのBlu-ray & DVD化、サザンオールスターズのデビュー43周年記念というやけに切りの悪い年にリリースされたこのパッケージメディアは、どちらかといえば茅ヶ崎映画祭10周年記念のための企画、とした方がすっきりします。

予告編を見た限りではとても爽やかなトレンディ青春映画という感しか抱けないのですが、実際はトンデモカルト映画といういわゆる予告編詐欺系に属する映画かと思います(笑

てっきり撮影時のリアルタイムの時制なのかと思いきや、舞台は東京オリンピック翌年(1965年)の稲村ヶ崎(鎌倉市)。

 

桑田佳祐氏自身が着想したこの映画は、いかにも桑田氏が好きそうな「風俗嬢とヤクザ」がストーリー上重要な位置を占め、全編にわたって桑田氏世代でウケけていたであろうギャグが散りばめられています。桑田氏の世界観を音楽のみならず映像化したらこんな感じなんだ…というのがよく分かる映画で、作品に込められた熱量は伝わってきます。

一方でストーリー自体は酷評されるのも頷ける出来で、特に「伝説の大波」の映画であるにも関わらず、そしてクライマックスシーンで実際それが来たにも関わらず、サーフィンのシーンは一切なし。しかもそのとき主人公は山に登っているという始末(;´Д`) そこで主人公は幻影を見せられ、サーフボードが空を飛ぶという、観客にとっても「一体俺たちは何を見せられているんだ」という映像体験。

「サザンの世界観を示した長編PV」としてみれば極上すぎる出来ですが、これを映画として何か期待してしまうとダメでしょうね。でも映像からほとばしる情感は本物であり、それがこの映画の評価をより複雑にしていることは事実かと思います。不思議なんですよ。ストーリーはグダグダなのに、未だ古さを感じないサザンの楽曲に合わせて描かれる鎌倉、江ノ島あたりの風景、人の営みに胸が掻きむしられるのです。

私にとっては「配信で一回観ればいいや」というものではなかったので、パッケージメディアを入手できてよかったです。夏ごとに見返したくなる映画だろうと思います。

 

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