ブルク13の2回目の上映(TH7、9:00-)で観てきました。着席率は目測で3割くらい。ジブリ映画の初日にしては少ない印象もありますが、それもそのはず。横浜みなとみらい地区の半径500mエリアだけでも、ブルク13が4スクリーン、109シネマズが3スクリーン、イオンシネマが1スクリーンの合計8スクリーンで上映されるので、お客さんも分散していたようです。昨年の「コクリコ坂から」は興味を示さなかったツマが今回のジブリは観たいということで、何年かぶりに二人で映画館です。
戦争を否定するわけではなく、肯定するものでもなく、ただ単に一生懸命生きた一人のエンジニアの半生を描いた物語。主人公・二郎は零戦の設計者である堀越二郎氏をモデルにしている訳ですが、三菱内燃機製造(現在の三菱重工・名古屋航空宇宙システム製作所)という実際の企業名を出してまでのリアルな描写、そして二郎の夢想の世界での先輩技師ジャンニ・カプローニとの心の交流がシームレスに繋がって、夢と現実を行き来します。
その二郎の夢の実現という縦軸に対して横軸として紡がれるのは、結核を患う少女であり後に二郎の妻になる菜穂子との出会いと別れですが、この「結核」という要素が小説版「風立ちぬ」からのモチーフ。小説版「風立ちぬ」自体は作者・堀辰雄氏とその婚約者である矢野綾子氏をベースにした物語なので、すなわち、この映画は「堀越二郎」「堀辰雄」「矢野綾子」の3人の人生をミックスしたような展開になっています。
にしても、特に冒険でもスペクタクルでもなく、ただ関東大震災から第二次大戦までを一生懸命に生きた会社員の姿を淡々と描くだけで映画になってしまうのですから凄い力量です。私自身は途中から涙があふれて止まらなかったとかいうことはなかったのですが(単に鈍いからだと思います)、後からじんわりくるタイプの映画でした。
終盤はやや駆け足であったという感想も聞きましたが、菜穂子が夫・二郎に対してとある理由で姿を見せなくなってしまうのと同時に、映画の観客からも姿を見せなくなってしまうのが駆け足に見える原因ではないかと思いました。しかし、菜穂子が姿を見せなくなった理由を知れば、映画のお客さんに対しても姿を見せない…という演出は、よくぞ女心を表現したものだなぁと感心しました。
モノラル音声というのも、時代表現にマッチしていたと思います。
ドキドキ、ハラハラはありません。が、またアニメの到達点は更新されたと思います。こういう作品が作られる日本のアニメってやっぱり凄い。
たぶん、ブルーレイは買うかな。
そうそう、庵野監督の声、良かったですよ。
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