ぺんてる「エアペン・ミニ」(1)デジタルペンが普通のペンであるために

みんぽす

2009年6月13日に開催された、ぺんてる(株)による、モノフェローズ向けの「エアペン」の説明会に参加したのでレポートする。

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今回レポートするエアペン・ミニとは、「書いた文字がパソコンに転送できるデバイス」である。見た目は普通のボールペンであるデジタルペンで、専用の小型受信部(メモリーユニット)とペアで使うことで、文字でもイラストでも書いたままをパソコンに入力することができる。

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筆記時にはパソコンは必ずしも必要ではなく、メモリーユニットさえあればいい。とにかく書くだけ書いて、あとでメモリーユニットをパソコンに接続すれば、書いたものをパソコンに取り込める。

メモリーユニットとデジタルペンの間は赤外線および超音波で通信する仕組みだ。赤外線で筆圧がかかったという信号を伝送し、超音波で位置情報を伝送する。
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メモリーユニットの受信部。
左右のスリットで超音波を、中央部で赤外線を受信する

メモリーユニットの裏にはクリップが付いており、筆記に使う紙の上部または左右いずれかに固定するが、左右に付ける場合、右利きの場合は紙の左側、左利きの場合は紙の右側に付ける必要がある。というのも、赤外線も超音波もペンの先端から発信されるため、右利きでメモリーユニットを紙の右側に取り付けると、ペンを握った手で通信が遮られてしまうからだ。

なお、メモリーユニットとペンが通信できる領域は概ねA4サイズまでだ。少し狭い気もするが、会議などで隣の席の同型ペンのユーザーと混信しない程度の通信エリアだそうだ。なるほど。

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メモリーユニットとペンはBluetoothのようなペアリング(事前に通信相手を定める設定)の必要はない。メモリーユニットが認識できるエアペン・ミニは同時に1本までだが、仕事でも複数のペンを使用したペア・レビュー(2人一組で行う相互チェック)などの際に便利そうだ。

エアペンにもメモリーユニットにも駆動するためのバッテリーが必要だが、ペン側のバッテリーは100円ショップでも手に入るボタン電池2個。メモリーユニット側のバッテリーはリチウムイオンの充電式で、パソコンとのUSB接続時に充電することができる。ついでに言うならばエアーペンのリフィル(交換可能なボールペンの芯)もISOの汎用品で、他社のものでも形状さえ合えば使用可能とのことである。消耗品はどこでも手に入るものを使うという設計の心遣いがいい。

ペン側のバッテリーの寿命は、毎日1時間の使用で3ヶ月程度を想定しているとのこと。超音波やら赤外線やらを常に出している割には意外と長持ちだ。

エアペンにはモードが3つある。(1)パソコンと接続せずに筆記を記録するモード、(2)パソコンと接続して、筆記をリアルタイムにパソコンに入力するモード、そして(3)筆記をせずに、パソコンのポインティングデバイスとして使うマウスモードである。

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マウスモードでのメモリーユニットの液晶表示。
中央の大きい数字はペンモードでのページを示す

今回の「エアペン・ミニ」の最大の売りは「普通のペン」であること。「マウスモード」で「左クリック」を行うための小さなボタンがグリップに付いていることが普通のペンとの僅かな違いだが、全体的な太さ、大きさ、重量バランス、書き味、いずれも普通のペンと遜色ない。ボールペンのリフィルも汎用品なのでインクも普通だ。

しかしこの「普通のペン」を実現するために、設計上、超えなければならなかったハードルがあった。それが筆圧関知である。過去のエアペンには筆圧を小型スイッチで検出していたため、筆圧をかけるたびに小型スイッチをONするためペン先がわずかに沈み、同時に「カチッ」という音がした。文章を書こうものなら、「カチカチカチ」と大変賑やかだったそうだ。このペン先の沈みとクリック音が、普通のペンを使っているという気がしない理由であった。

そこでエアペン・ミニでは、変形する力で抵抗値が変化する特殊な導電性ゴムを筆圧検知のスイッチに使用した。ペン先に力が加わると、ペン軸の後端に位置する導電性ゴムが僅かに変形し、無音で筆圧を検出することができる。これにより普通のペンとほとんど変わらない書き味を達成することができた。実はペン先が沈み込む量は過去のモデルと変わりないそうなのだが、違和感がほとんどないのは、カチカチと音を立てないことの効果が大きいのかもしれない。

エアペン 内部

エアペンの内部

エアペンの内部には、もちろんICやらチップ部品やらの回路が詰まっている。上の写真で水色の、昔ながらの抵抗のようなものが見えるが、超音波発振のためのインダクタだそうである。また、途中フレキシブルケーブルがたるんでいるのは、組み立て上必要なたるみだそうで、実際の使用中にこのたわみが変化することはないとのこと。超音波を発生させるためには高い電圧が必要なのだが、この細いペンの中でそのような高圧が発生しているところが面白い。もちろん、通常使用において感電することはないので心配は無用だ。

ペンのキャップが閉まる「パチン」という音さえも、普通のペンであることを目指して設計されている。なんてことはないキャップだが、閉める瞬間に段差を乗り越える「キャップかん合部分」と乗り越えた後の加速度で小気味よい音を発生するための「キャップ音出し部分」によって、誰もが違和感を感じないフィーリングが生み出されている。キャップが閉まる瞬間の何ミリ秒という間に、こんな世界があるのだ。

コメント

  1. とおりすがり より:

    消すのはどうするの?
    二重線のみ?

     手元のメモの間違いを消しゴムで仮に消したとしても、デジタルデータには記録されるんでしょう?

     つまり+のほうのみであって、-方向へは駄目だと。

     まあ、その意味ではボールペンそのものですね。
     (最近では消せるボールペンも普通に見かけますが)

     Intuosのペンと同じように、ペンの後ろに消しゴム機能をつけてくれたら、なお完璧になると思いますが、いかがでしょう?

     Wacomが特許握ってるのかなあ。

    そんな国内で争いやっていると、今に韓国や中国に先を越されるぞー。

  2. > 手元のメモの間違いを消しゴムで仮に消したとしても

    いえ、インクなので、消しゴムでは消えません。

    なお、当方は個人ブログでありぺんてるさんに
    ご意見、ご要望は伝えられませんので、製品に
    関するリクエストはぺんてるさんの方に直接
    お願いします。

    個人的には「あれができない、これができない」と
    指摘することも技術の発展には必要と思いますが、
    今できることをいかに活用して自分の役に立てられ
    るかというのも、大切だと思います。

  3. sat.voice より:

    クマデジタルさんの返信 「個人的には「あれができない、これができない」と指摘することも技術の発展には必要と思いますが、 今できることをいかに活用して自分の役に立てられ るかというのも、大切だと思います。」に、同感です。

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