2度目を観てきました。今回の記事はネタバレありですので、未鑑賞の方はご注意ください。
初見の時はこのとっちらかった話をどうやって収斂させるのかというところに興味が集中してしまいましたが、2度目は結末を知っているお陰で、純粋にエンタメとして楽しめました。
1995年のテレビ放映開始時にはおそらくこんな結末になることは計画されていなかったはずで、当時はちょっと「ナディア」や「トップをねらえ!!」風味のSFロボットアニメを目指していたように思います。それが今や監督の内省のお話になってしまい、終盤のゲンドウの台詞は庵野氏の心の吐露そのものなのではないでしょうか。ラストシーンが監督の出身地であるJR宇部新川駅であるところからもそれが覗えます。ちなみにそのJR宇部新川駅での成長したシンジ君の声は「君の名は」の瀧君など数々のイケメン主役を演じている神木隆之介氏でした。
劇中歌に松任谷由実の「VOYAGER」が採用されたのも印象的で、歌い手はどうもエンドロールから推察すると綾波レイ役の林原めぐみさんのようです。明確にそうは書かれていませんが、エンドロールの「音楽」の項の不自然な位置にお名前がありましたので。しかしよくこの曲を掘り起こしてきたと言いますか、歌詞が恐ろしく場面に合致していて、もうVOYAGERはエヴァの曲としか聞こえなくなってしまいました。(元は1984年の映画「さよならジュピター」のために書き下ろされた曲。)
アスカがクローンだったというのは意外でしたが、過去作品上「惣流」と「式波」という2つの名字があったので一瞬で腑に落ちました。
前半がジブリ風味だったのは良い意味で面食らいました。まさかエヴァでレイの田植えシーンを見る日が来るなんて。しかもプラグスーツ姿で(笑。このあたりは庵野氏がスタジオジブリと関係を持っていることも影響しているのでしょう。
ニア・サードインパクトでグチャグチャになってしまった世界の中で、結界のような物を張って、しかもそれはいつまで自分たちを守ってくれるのかも不確かな中で、一日一日を大事に生きていく残された人々の姿は、「現在進行形の震災」「原発事故の後始末」「先が見えないCOVID-19」のコンボの中で生きてゆく我々そのものの姿が重なります。最近、日々生きていくのだけで大変で、もう昨日までののような日々は二度と来ないことが分かっていて、明日も平穏な日とは限らない状況下での気が休まらない暮らしが続いているわけで、身につまされます。
終盤、ゲンドウが乗るエヴァ13号機とシンジの乗るエヴァ初号機が市街戦をするときに、ぶつかった建物が壊れるのではなく、まるで箱の置物のように滑ってゆくのに「ん?」と思いましたが、その後空に「ぶつかった」と思ったらその空は背景布だったという描写があり、このあたりはアニメと特撮を行き来する庵野氏ならではの演出だと感じました。
シンジ君が自分の犯した罪と向き合うことで精神的に成長し、そして自ら精算をしようとする流れは、今まで散々ウジウジしていたシンジ君を見せ続けられてきた身からするととても感動的です。最後、自らを犠牲にして精算を完了させようとするシンジ君をお母さんの魂が救う、という流れは陳腐だなとは思いつつも、目頭は熱くなりました。演出の力ですかね。
終盤、線画が出てきたときは「ああ、庵野氏の悪いところが出てしまった」と一瞬思いましたが、それを含めて25年のエヴァンゲリオンですよね。すべてのパラレル設定を肯定し、優しい世界でエンドロールを迎えたことは、多くのエヴァンゲリオンファンに支持されることと思います。紆余曲折あってよくここにたどり着いたな、と胸がいっぱいになりました。
コメント
今日見てきました。
23〜24年ぐらい前に深夜の再放送を見たのが最初でした。
コミックスの貞本エヴァも取り込んだ展開でしたね。
息子の言う「途中吐きそうになって苦しかった。とにかくすごかった」と言うのはよく分かりませんでしたが、
なるほど、こういう終わり方なのかあ・・・と、未消化感はありませんでした。
庵野秀明さん、お疲れさまでしたって感じです。