新型プリウス(2023 / ZVW60型) 試乗

2023年1月より販売開始された新型プリウスに試乗してきました。最初レンタカーを借りようかと思ったのですが、12時間で1万円ちょっとかかってしまい、もし天井の高さがにっちもさっちもいかなかった場合無駄になってしまうなぁと考え、パッソでお世話になっているトヨタモビリティ神奈川の30分無料試乗を利用しました。

 

まずそもそも、ランボルギーニ・ウラカンに近いフロントガラスの傾斜角を持つボディで、私(身長184cm)が乗れるのか?という懸念がありましたが、結論から言えば問題ありませんでした。さすがグローバルカーです。試乗したのはトップグレードの「Z」でシートの前と後ろを独立してリフトできるため、お尻側をストンと落として、太もも側を持ち上げ気味にセットすることで、快適な姿勢を作れました。1つ下の「G」グレードだと単にシートの上下しかできないようなので、もしかすると印象が変わった可能性があります。

ただ、後席はあまり広くなく、184cmの私にとって膝は前席シートバックに当たります。また、天井もクリアランス確保のためにえぐってあるのですが、そのえぐってある部分が頭上に来ず、頭が天井とリアガラスの間のフレームに当たります。後席はきちんと座れるのは身長180cmまでで、それ以上は少しお尻を前に出すなど崩れた姿勢で乗ることになろうかと思います。

なおリアドアの外側のドアノブは電磁式で、ちょこっと持ち上げると電気の力でロックが外れるタイプです。事故で電力供給が失われた場合に外側からどうやってこじ開けるのかはちょっと分かりませんでした。

後方視界はAudi A3と比べて少し狭いですが問題になるほどとは思えませんでした。A3は広い視界を小さいバックミラーで切り取ってしまっているのですが、プリウスは逆で、ミラーは大きいのですがその視界をリアガラスで切り取ってしまっている感じです。結果的に同じような後方視界の広さになります。

走り出すとどっしりした乗り心地が印象的でした。それなりに軽量なはずなのですが、重い車に乗っている感触があります。サスペンションは締まっていて、レヴォーグやアウディあたりと似た感覚のサスペンションです。ただアウディあたりと結構違うのは、サスペンションの極微小領域のストロークと言いますか、具体的には路面のザラザラ感がわりとステアリングに伝わってくるなぁという印象はありました。最近の欧州車は締まった乗り心地でも路面のザラザラ感をシャットして、しっとりとした感覚に仕上げてくるんですよね。これ単体で乗っている分には特に不満はありませんが、マイナーチェンジでの改良の余地は残されているなと感じました。

ステアリングの本革はソフトタッチで、日本人好みだろうと思います。ちょっと中に入っているふわふわ感を生むウレタンがへたったらどうなるんだろう、という心配はあります。この本革ステアリングも日本車の中ではかなり上出来な部類です。

2Lエンジンのハイブリッド車ですが、加速感はまぁ遅くも速くもなく普通。数々の悲惨な事故を起こした過去モデルが1.8Lだったのでそれよりはパワーがあると考えると一般ユースでは充分な速さでしょう。エンジン音もそんなに滑らかと言う印象はありませんが、巡航時は静粛なので許容範囲。カローラのハイブリッドと比べると大きい質量のものを動かしている印象はあります。

 

試乗車は青(ダークブルー)でしたが、凝っていないシンプルな青でした。ぶつけても修理はしやすそうですが、所有満足感は希薄ですね。もうちょっとメタリック入れるとか凝った塗装にしてくれればいいのに…。

 

メーターはバイザーなしで、ステアリングの上越しに見るタイプ。あまり見やすいとは思えませんが、機能不全と言うこともありません。新しい乗り物に乗っている感という意味では、充分受け入れ可能であると感じました。バイザーがないため、メーターに付いたホコリに光が当たると結構目に付きます。

 

フロアコンソールは今までのプリウス同様とても高く、運転席と助手席のセパレート感は強いです。シフトレバーの操作パターンは従来と同じですが、これが事故の原因の一つというのはよく分かります。輸入車と国産車を交互に乗るとワイパーのレバーを間違えますが、今までの普通のATから乗り換えるとこのプリウスのシフトもなかなか慣れません。咄嗟の時など昔の車の記憶でオーバーライドされると、操作は間違うだろうなぁという印象があります。

慣れない原因はD(ドライブ)やR(リバース)に入れたあと、レバーが勝手にセンターに戻ることですね。R→Dが単にレバーを下げるだけだったら良かったんですが、センターに戻っているので→↓という操作になります。この→↓という操作がマニュアル車だと「後退」なんですよね。昔マニュアル車に乗っていた頃の記憶が高齢になったときにひょいと顔を出すと、後退するつもりの操作でロケットスタート、ということは容易に想像できます。今どのモードに入っているのか把握しにくいという観点でも宜しくないですね。

 

心配していた視界はまったく問題ありませんでした。スープラだとガラスの上端が目の真正面に来て斜め上方(信号機など)がまったく見えなかったのですが、想像以上に普通に見える視界でした。乗り降りの際も頭をぶつけやすいということもありませんでした。それはミニバンとかSUVとか軽ハイトワゴンと比べればかなり低いですが、Audi A3だって似たようなものですよ。これは嬉しい誤算でした。

停車時にはナビ画面がカメラ画面に自動的に切り替わり、周囲の様子を観察できるようになっています。ナビ画面の解像度はとても高く、カローラやRAV4あたりで感じたドットの荒い印象はありません。

 

今回から従来の「ハイブリッドシナジードライブ」ロゴに代わって、「HEV」ロゴが装着されました。PHEVは登場時からPHEVでしたが、従来のハイブリッドはP(プラグイン)ではないHEVということでこの呼称になっています。自動車業界内部ではだいぶ前からHEVと呼ばれていましたが、トヨタが「ハイブリッド」という呼称を使い続けていたため、なかなか切り替わりませんでした。

さて総括すると、これが先代同様に国民車として爆売れするというのはとてもレベルが高いなぁと感じました。プリウスロケット問題を回避するための根本策は誤発進防止機構以外は打たれていないように見えますし、いかんせんスポーツカー的でスタイルもいいので昔走り屋だった60代〜70代の琴線に触れて一定数はロケットと化すのでしょうが、皆さん生活密着のアシ車としてこれ乗られるんですよねぇ。こんな完成度が高くてカッコイイ車が国民車でアシ車とか日本ってまだまだ凄いなぁと感心せざるを得ません。

自分はもし買うタイミングであれば、これは買ってもいいと思いました。ただ、まだAudi A3がとても気に入っていて修理代で心が折れるまで乗りたいと思っていて、その後2年くらいはセカンドカーのパッソ1台だけでいいかなと思っています。その頃の勤務地にもよりますが、買うとすればパッソを乗り潰した後ですかね。その頃にはプリウスも次の世代になっていそうですが。

 

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