意外なことに日本初の「不思議の国のアリス」の劇場アニメとなる、「不思議の国でアリスと – Dive in Wonderland -」を妻と一緒に観てきました。Dive という単語を見て「ソードアート・オンライン」を連想したあなた、その感覚は非常に正しいです。
監督は「色づく世界の明日から」の篠原俊哉、脚本は「トラペジウム」の柿原優子ということでどちらの作品も心に引っかかってる私はきっと本作も何か引っ掛かるだろうと踏んでの鑑賞です。妻は単純にアリスのファンなので。
にしても、この人気のなさよ(笑。上映5分前で予約4人って。
これ公開翌々日の日曜の夜ですよ。いくら裏で「24時間テレビのマラソンのゴール」があるとしてもですよ? 4席のうち2席は我々夫婦ですからね。
上映時間は90分ですが、終始映像と音楽が心地よいというか、尖ったところがないので結構眠くなります(笑。
【私の感想】
・松竹とTBSが資本提携した後の初の映画ということであまり変なものというか、尖ったものは作れないというのは分かる。
・映画の面白さの大部分を「素材(アリスの原作)の良さ」に依存しているように感じた。
・その一方で、アリスだって日本の手にかかればこうなるんだぞ!という誇示の雰囲気も感じた。(ニャルラトホテプという化け物だって日本の萌えの手にかかればニャル子さんになるんだぞ!みたいな。)
・原菜乃華は「すずめの戸締り」すずめ役でも高い評価を得ているし、直近では「推しの子」実写版の有馬かなでも素晴らしい演技を見せたが、今回の演じ方、どこかで聞いたような…と思ったら「グリッドマン・ユニバース」の女子高生の話し方だった。あの普段の会話のナチュラルな感じ。
・もしかしたら長い時間をかけてじわじわと評価される作品なのかな…とも思ったが、SNS周りの描写が今日時点の現代なので、そこの賞味期限はあまり長くなさそうだなと思った。でもすごく上質な感じはする。
・背景の水彩画だと思ったら動画だったのすごい。
・音楽と主題歌は良かった。セカオワって一時期食傷気味だったが、こんな作品に寄り添った曲も書けるんだ、とちょっと感動した。
・「おめでとう」で囲まれると何でもエヴァに見える自分を反省。
・結局企業としては国民には推し活をして欲しいのかな、推し活を推したいのかな、と感じた。
【妻の感想】
・原作のアリスのファンなので、現代のアニメ技術で、かつ現代モチーフも散りばめられた形で映像化されたところが良かった。
・主人公の就活生の生き様が自分と重なるところがあり、それが肯定されたところが良かった。
・おばあちゃん周りのエピソードも良かった。
・音楽も主題歌も良かった。
・自分にとって観るべき映画だった。
・原菜乃華ちゃんを使ったTBSのプロモーションは弱いと思った。
妻はグッズ買っちゃうくらいには気に入ったようです。(そんな私もパンフレット買ってますけど。)
オチのスマホ画面でずっこけたという感想も見受けられましたが、その批判は解釈が浅いです。あれはお婆ちゃんが仕込んだ世界から出たらもう会えないはずのアリスに、りせはいつでも会えるようになっているという「お婆ちゃんの仕込んだ世界を超えた」というメタファーらしいんですよ。
いい歌詞じゃないですか…。「呼吸するための空気が目減りする中で」というのが今後あらゆるリソースが減っていく日本を表しているし、「飛んでゆけ どこまでも 根を張る場所を探し求めて」というのがこれから社会に出る人へのエールですね。
プロモ映像見る限り泣くのは不可避な感じがするんですが、監督がパンフレットで以下のようなことを語っていて…
– P.A.WORKSの堀川プロデューサーに「『不思議の国のアリス」を原作とし、若い女性を主人公にして、彼女が社会に出た時にぶつかった壁を乗り越え、観終えた人が気持ちよく劇場を出られるような、そんな映画を作りたい」とオファーがあったのが始まり
– 実際には、主人公であるりせの現実部分の問題を『不思議の国のアリス」というパッケージの中にうまく収めることができずに、試行錯誤を繰り返すことになってしまいました。脚本の柿原さんにはかなりご苦労をかけてしまったと思います。
これでいろいろ腹落ちしました。
そんなわけで、刺さる人は選ぶと思いますが、
<こんな人にお勧めします>
・「アリス」原作のファン
・今まで好きなことを公言しない、公言できないで生きてきた人
・自分を抑圧して生きてきた人
・就活生
私が「いい映画だな」とは思いつつも、心の奥まで刺さらなかったのは、多分私が好きなことを隠さないで自由奔放に生きてきたからなんでしょうね。
就活生といえば、自分の就職活動中には「就職戦線異常なし(織田裕二主演)」が公開されたのを思い出しました。主題歌の槇原敬之「どんなときも」は時代を象徴する一曲になりましたね。「どんなときも」のサビの歌詞「好きなものは好き!と、言える気持ち抱きしめてたい」が本作のテーマと一致することに気がついて驚きました。
入場特典のカードの裏側のQRコードから、劇中に出てきたお婆ちゃんのオルゴールが聴けます。なかなか粋な特典ですね。
コミック、チラ読みしましたが再現度高ぇ…アニメイトで買うと送料かかる代わりにミニ色紙がもらえるようです。
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