NEX-5Rを借りる機会があったのでレビューする。
初代NEX-5およびその廉価版のNEX-3がデビューしてから2年経つ。APS-C画質がこのサイズのボディで撮れるという衝撃は現在でもなお薄れていないが、その間に上位のモデルとしてNEX-7、NEX-6がリリースされているのはご承知の通り。
だがNEX-7、NEX-6が市場の声に応えるカタチで生まれてきたように見えるのに対し、NEX-5は何もないところから生まれたフォーム。作り手の思いが一番色濃く表れているのではないだろうか。品川方面から「一番作りたかったのは、これだ」と言う声が聞こえてきそうだ。空耳かも知れないが。
そのNEX-5の系譜の3代目となる本機NEX-5Rは、進化著しいデジカメというカテゴリーにおいて、奇跡のような存在。ダイヤルが付いたりキーアサインが変わったりはしたが、基本的な形状は変わっていない。それだけ最初から完成度が高かったとも言えるし、大事にされているとも言える。
だがあいにくNEXシリーズはレンズには恵まれなかった。画質と使い勝手のバランスにおいて、ボディの小ささを生かすキットレンズが存在しなかったのだ。それゆえオールドレンズ遊び用に最高のボディとして名を馳せることになってしまったが、今回NEX-5Rと同時リリースされた「E 16-50mm f/3.5-5.6 OSS」はようやくNEXの機動性を生かせるレンズとして待ち望まれていた1本。これはおそらくユーザー必携となるだろう。
昼食のパンを買いがてら、NEX-5Rを持って秋も深まってきた近所を散策。E 16-50mm は意外とマクロ的な使い方にも強いと感じた1枚。万能レンズの予感。
アンダー補正しているが、それでも過去のソニーのカメラにあった、ほんの僅かに緑がかる空なども今や昔。
ミラーレスってシャッターチャンスに弱いんじゃなかったのか!と驚愕した1枚。NEX-5はそう感じたことがなかったが、NEX-5Rは本当に速い。AFも速ければ、シャッタータイムラグもミラー付き一眼の挙動が染みついてしまった体にはタイミングが合わないほど高速。この運動神経の前では EOS M はジリジリと値を下げてしまう訳だ。
ただ誤解のないように言っておくと、そんなNEX-5Rでも起動だけはなぜかワンテンポ遅れる印象がある。スリープからの復帰は遅くないのだが、中途半端に電源レバーがいい場所に鎮座しているので、気軽に電源を切ってしまうと次のチャンスに泣くことになる。
ファインダーがオプション扱いとなる本機でのスナップで肝になるのが、液晶を使ったフレーミング。明るい場所で難儀するのは一般的なコンデジと同じだが、屋外用に特別に液晶の明るさを上げ、色温度を下げる「屋外晴天」モードが用意されている。ただ屋外晴天モードを使うと、今の季節の紅葉がやたらと赤く見えてしまう。仕上がり彩度を撮影時にイメージできるようになるには、慣れが必要と感じた。慣れないうちはRAWを併用するのが無難だろう。
暗部の階調もさすがAPS-C。スマホとは違うのだよ、スマホとは。
散歩から帰ってきて思うのは、厳しいことを言うようだが、この限界までそぎ落としたボディだからこそ足りないものがあるなぁと言うこと。それは数ミリ、またはコンマ数ミリ程度の、ボディ形状やボタン配列、ボタン形状への拘り。ここは明らかに EOS M にアドバンテージを感じる部分。NEX-5R には、一日このボディを右手に握り締め続けて、どこの筋肉がどういう感じに疲労するか。そういった検証に余地があるように感じられる。「初代から変わらない形状」とは相反してしまうのかも知れないが、今後進化するならそういう方面がいいなぁと思う。
しかし裏を返せば、EOS M のアドバンテージは、その握り心地、操作のしやすさと、膨大なEFレンズが使えること、くらいしか思いつかない。AVCHDビデオも撮れ、チャンスにも強い。「スマホのカメラでは物足りないが、カメラはビデオカメラ含めて1台しか買えない、または買うつもりがない」という用途には NEX-5R は本当にお勧めしやすい。画質には妥協したくないが、一眼レフほど一生懸命になるのは気後れする。そんな願いをスマートに叶えてくれるのが NEX-5R だ。
そうそう一眼レフと言えば、ストリートで撮影していても周りの目が一眼レフと全然違うのも印象的だった。一眼レフを構えていると注目の的になることも多いが、この NEX-5R で撮っていても周りは誰も気に留めないのだ。このステルス性はまるでコンデジ感覚。なのに画質はAPS-C。なんか、いいなぁ。
今回の貸出期間は約2週間。引き続き使ってみて、レポートします。
コメント
ども。
デジ一に興味はあれど、先立つものがありません…
詳細なレポート、期待しております。
あえてあげるとすれば、フォーカス合わせについて。
どうぞ、よろしくお願い致します。