V37スカイラインのエアコン左右温度差問題

V37スカイラインのエアコンの暖房時の吹き出し温度が左端の吹き出し口のみ10℃低い件が話題ですが、どうも事実と印象論がごっちゃになっていて、真の原因にたどり着いていない印象があります。「やっちゃった日産」と茶化して思考が止まっているケースもあります。しかし興味がありますので、自分なりに考えてみます。

 

まず前提条件として、

スカイラインV37の温度センサーは、室温を測る温度センサー(運転手の左膝のあたり)と、日差しを測る輻射センサー(ダッシュボード上の車両前側端)の2つあります。これは多くのクルマで一般的な構成で、左右の温度を別々に設定できる車両でも、センサーまで左右独立で付いているクルマはよほどの高級車に限定されます。400万円程度のクルマにはついていません。高いポルシェとかは付いているケースがあります。LEXUS LSあたりはもっとセンサー構成が複雑なので割愛。

つまり左右の温度を別々に設定できる車両でも、本当に設定したとおりの温度差を作ることは原理的にできません。もっとも、運転席と助手席は同一空間なので、そこを頑張ったところで効果はたかが知れています。

しかし今回は左右別の温度設定を使わなくても左右の吹き出し口に温度差が生じているとのことなので、左右別制御は関係ないことになります。故障していれば別ですが、日産側の控えの車両でも同じ現象が確認されていることから故障ではないと判断します。

 

ここからは推測になりますが、

まず、設計基準として、室内の温度を目標値に近づけるための設計基準は当然あるとしても、「頭冷足暖」モード以外に室内の温度の均一性(左右差)に関する規格基準がないのではないかということ。これは日産だけではなく、他社にもない可能性が高く、日産だけの問題とは思えません。

次に、これが真の原因ではないかと思いますが、日産車のインパネ内の空調ダクトの形状がまずく、エバボレーター(熱交換器)の位置関係によりどうしても左右温度差が生じやすい形状であるのではないか、ということ。

ではなぜ今までこの雑な設計が表面化してこなかったか。理由はいくいつか考えられます。

社内の検証でなぜ見つからなかったか:温度の均一性に関する規格基準がないから。

今までのユーザーがなぜ気づかなかったか:誰もそこに着目していなかったから。暖房時にドライバーから助手席左側の吹き出し口なんて手が届きにくいし、そもそも調べない。助手席に座った人が寒く感じれば吹き出し口を手で閉めてしまうか、左右温度調整機能を使って強制的に温風が出るように操作してしまうから。

というところではないかと思います。

これが今後どれくらいの騒ぎになるのか分かりませんが、今後はエアコンの左右温度差を気にするメーカーも現れるでしょうか。やることはおそらくインパネ内の空調ダクトの形状を真面目に検討することであり、一時金である設計コストはかかっても製造上の追加コストがかかる訳ではないので、やればいいと思います。ただ、採用しているプラットフォームの制約でどうしてもこういう形状にせざるを得ない、というような理由がある場合にはしんどいですね。ここに補強用のバーが入るのでそこは避けてダクトを通さなければならない、とか、エンジンルーム内の制約でエバボレーターの位置に制約がある、というようなケースです。

 

ところでこの問題を告発されている方は、左側の吹き出しで10℃低い空気が出るために室内がいつまでたっても暖まらない、ということを言われていますが、話が定量的ではないので疑問を抱かざるを得ません。「室内が暖まりにくいのは10℃低い空気が出ているからだ」という、いかにも確からしい思い込みの可能性もあるのではないかと思います。

事実を証明するのであれば、外気温や日射が同一の条件で、左端の吹き出しを閉めた場合と開けた場合で室内温度が目標温度に到達するまでの時間に差が生じるか、ということを測定する必要があると思いますが、実際は自然環境で長時間にわたって外気温や日射が同一の条件にそろえるのはほぼ不可能なので、屋外では正しく測定できません。

個人的にはエバボレーターに風が充分当たっていると仮定すれば、エネルギー保存の法則から言っても左端から冷たい風が出ている分、その他の送風口からはより高い熱量の風が出ているはずであり、目標温度到達までの時間は変化がないのではないかと思っています。室内の温度分布にムラは出るし、助手席の人は比較的寒く感じるでしょうけどね。

コメント

  1. KYON より:

    はじめまして。V37 エアコン で検索して辿り着きました。
    私も例の記事を拝見しましたが、「車内が温まらない件」「左右で風の温度が異なる件」をごちゃ混ぜにされている印象を受けました。コメント欄にも、暖房が効かない点についての点検について言及がされておりましたが、華麗にスルーしているあたり、「本当は別の現象だとわかっていながら、わざと定量的なデータを出さず、ごちゃ混ぜにして問題提起し、目立ちたいだけなのでは?」と邪推さえしてしまいました。
    仮に不具合であったとするならば、V37は販売台数もたかが知れていますし、エアコン制御ソフトウェアの変更だけで済むはずですから、こんな初歩的な問題を放置しないのでは?と思っています。特にコンプライアンスが叫ばれる昨今・・・

    長文失礼いたしました。

    • Kumadigital より:

      コメントありがとうございます。まぁ日産の客相のレベルの低さも残念ですが、双方真面目にガチンコ勝負で解決する気が感じられませんね。日産が出してきた回路ブロック図も説明になってないし。
      ソフト改修だけで済むとは限りません。なぜならば、ソフトで左端の吹き出し「だけ」の温度制御をできる確証がないからです。たぶんソフト改修するとナビ左側の吹き出しの温度も一緒に変わってしまう気がします。

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