東日本大震災から一年。この思わず振り返られずにはいられないタイミングで開催された写真展「生きる」を観てきました。
家を呑み込むほどの高さになった津波を、人の背丈の目線から捉えた写真から始まる展示。明らかにカメラマンの背丈の2~3倍はあるであろう津波を捉えたカットは、超望遠レンズなどではなく、僅か80mmのレンズで撮影されたものだと説明の方に聞きました。(撮影された方は存命とのこと。)
現地在住の日本写真協会会員による地元目線の写真の数々。今回初公開のフィルムを含むようですが、やはりカメラマンには相当な葛藤があったようです。ご近所さんの自宅が呑み込まれていく姿を見世物にしていいのかという思い、それが今まで公開されていなかった理由の一つだったようです。
展示は「被災」「ふるさと」「生きる」という三部構成の流れになっており、最後は復興を懸けてたくましく生きる被災地の人々の姿で締めくくります。
ギャラリーの一番奥には読売新聞一面に掲載された「ままへ。いきてるといいね おげんきですか」の写真もありました。
展示を見て、いかに普段の文明的な生活が危ういバランスの元に成り立っているのかを再認識し、また、普段自分が直面している問題が、こういった事態の前にはもはやどうでもいいことだということを実感しました。被災地ではなお現在進行中の出来事で、復興は息つく暇もない仕事量だとも聞きます。その懸命に生きる姿には目頭が熱くなりますが、首都圏、東南海では明日は我が身のことになるかも知れず、感傷に浸ってばかりもいられません。
なお、この写真展は以下の写真集「生きる」に掲載された130点のうち、90点を展示したものです。
「富士フォトギャラリー新宿」にて。2012年3月15日まで。
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