先日書いたようにiMovie’09のインターレース書き出し問題が治った。
iMovieは’08版でインターフェースをガラリと変え、また、それまであったある程度の細かい編集機能もバッサリ切り捨てたことで、少し距離を置いてしまったユーザーも多いと思う。私もその一人で、’08を買わずに’06でやり過ごしていた。
個人的にはこの頃にAVCHDカメラに移行し、編集環境について悩まされることになった。iMovie’08が当時使っていたPanasonic HDC-SD3に対応したのは解っていたが、編集した映像を現実的な価格でリビングの大画面に持って行く手段が思いつかなかったし、何より、AVCHDすなわちH.264圧縮された映像を解凍して編集して再圧縮、というアップルの考え方に共感できなかったのだ。(実はHDC-SD3の前にはDVDビデオカメラにも手を出していたのだが、これもPanasonic DVD-MovieAlbumSEでGOP単位ながら無劣化編集ができた。)
だから私はMac上にWindows環境を作り、あちらの世界(…なんて死語か(笑))では支持者の多いPanasonicの「HD Writer」で編集をしていた。HD WriterではGOP単位でのカット編集しかできないものの、編集した映像をSDカード経由でリビングのDIGAに持って行き、HDDなりブルーレイディスクなりにダビングできた。
ただ、この方式にも欠点はあった。Mac上のWindows環境なので、ちょっとMacで見たい時に視聴環境の起動に時間がかかり家族に呆れられること、そして編集するとシーン間に「息継ぎ」が発生することだ。
そんな決定打に欠けるAVCHD編集環境に悩んでいた頃、iMovie’09(iLife’09)が発売になった。試しに使ってみて驚いた。
細かい編集機能は復活してるわ、HDDに単純コピーしたAVCHD映像フォルダから取り込めるわ、HDDに溜めたビデオをライブラリ的に視聴する環境が付いてるわ、そして同時期に登場したToast10+HD Pluginを使えばHD解像度でBDディスクが作成できるわ、そして動作速度が軽快だわで、「あれ? これって結構イケてない?」と思った。冒頭に挙げたインターレース書き出し問題もついに解決され、いよいよiMovie’09は私の環境で離陸しそうな勢いだ。
ただし、iMovie’09の動作速度が軽快なのにはワケがある。
AVCHDの取り込み時にH.264圧縮をほどき、iMovieにとって都合のいいApple Intermediate Codec (AIC)と呼ばれる中間フォーマットに変換する。これにより無劣化での編集は事実上できなくなるが、その代わりに軽快な操作性が手に入り、GOP境界を意識したり、息継ぎの心配をしたりする必要もなくなるのだ。
結局、AVCHDというのは、現実的な記憶容量にハイビジョン映像を納めることを至上命題として考えられた規格であり、編集のことなどはあまり考えられていない。その代わりとして、我々ユーザーはこの時代でハイビジョン映像を手のひらサイズの、そして10万円もしないビデオカメラで撮影できる機会を得られるようになった。
Appleが無劣化編集を軽視しているとは思えない。その証拠に、iPhotoでは編集前の写真にいつでも戻せるし、iTunesだってAAC/MP3圧縮をせずにリッピングできるモードがある。しかし、現時点でハイビジョン映像をハンドリングする環境を考えたとき、無劣化にこだわらず、ほんの少しの劣化さえ許容して貰えればこんなに快適になるんですよ、というバランス点をiMovie’09は示していると思う。
とはいえ、AIC変換された映像データはなかなか凶悪なサイズだ。さて外堀が埋まってしまったので、何とかHDDを工面するしかないだろうな…。(笑)
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