端末の独自性はクラウドによって形作られると本田雅一氏は言いました。しかし、同じクラウドサービスを受けられる同じカテゴリーの製品だからこそ、ハードウエアの差別化が必要になります。ユーザーに選んでもらうためには、そして長く愛用してもらうには……ソニータブレットに込められた開発陣の思いをレポートします。
ソニータブレットの開発は2007年にまで遡ります。2007年と言えばiPadが登場する前。ソニー開発陣には「先にやられた」という思いがあったとも聞きますが、iPadがタブレットの風景を一変させてしまったのも事実。これは推測ですが、iPadの登場で相当アイデアの練り直しをさせられたのではないでしょうか。
にしても開発に4年。この手の製品にしては少し長すぎるように思います。しかし「作り込んで、何ができるか」(ソフトウエア設計部統括部長 佐藤晃一氏)を追求した結果、これだけの時間がかかってしまったようです。「ハードをキッチリ作り込んでいるから、気持ちよく使える。世の中にないものを作るときには、頭で考えたものをゴールにしてはダメ。私達はプロトタイプ製作と体験評価を何度も繰り返した」(同氏)。
その作り込みは官能的な面ならず、実用的な面にも及びます。世界トップブランドの強化ガラスを奢った筐体は、リビングでの使用に耐えられる強度を持っています。皆さんもリビングにあるテレビのリモコンを踏んだり蹴ったりしてしまった経験はあると思いますが、それでリモコンが壊れたという話はさほど聞きません。そのレベルの耐久性を念頭に置いたとのこと。それが前回のエントリにも掲載した以下の写真です。
(注:一応お約束ですが、踏んだり蹴ったりして壊れないことを保証するものではありません。)
また、ソニータブレットの気持ちよさを形成する要素に、「サクサク・エクスペリエンス」があります。指先に気持ちよく反応し、ブラウザのレンダリングは快速。独自のチューンを施されたWebブラウザは、Andoroid標準のブラウザより確かに体感速度は上。このあたりの快適さについては、むしろソニー役員クラスが拘りを持っていたというのが驚きです。
Andoroidが走るマシンは開発時期が同じであれば速度もそんなに差が出ない。ソニーの独自性を出すにはソフトウエアの作り込みに手を入れるしかない、ソニー製である付加価値はそこにある……おそらくそういった想いで役員は「サクサク」の作り込みを指示していたのでしょう。そのフォローアップのキツさは、「黄色い汗が出る」レベルだったとかそうでないとか。
にしても、役員クラスがそんな細かいところまで認識しているのは素晴らしいですね。(開発陣にとっては堪らないと思いますが(笑)、ソニーの付加価値とは何か、をちゃんと役員が考えてくれているんだと理解しました。)
さらに開発陣は考えました。この気持ちよさについては「何となく気持ちいい」では勿体ない。折角作り込んだのだから、気持ちよさを「見える化」したい、そう考えました。そして何十人もの社員に使ってもらい、気持ちよさを数値化したデータを蓄積しました。このデータについては次機種以降のベンチマークとして活用される予定のようです。
次回に続きます。
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